INSIDE CHANEL ─〝完璧〟を紡ぐ人々─ DAY.2

時計特集

G&Fシャトランのダイヤモンドセッティング部門。完成した地板に穴をうがって爪を立て、そこにダイヤモンドを固定する。現在、スイスでも、ムーブメントにダイヤモンドをセッティングするメーカーは何社もない。また、バゲットダイヤモンドの精密な取り付けもG&Fシャトランの強みである。

 G&Fシャトランでは、ダイヤモンドのセッティングも行っている。普通、こういったプロセスは外注だ。しかし、シャネルは完全を期すため、ダイヤモンドセッティングのノウハウを培ってきた。現在、G&Fシャトランが行うセッティングは、下地を機械的に整えたもの、ツメを立てて石を固定する伝統的な手法、そしてバゲットセッティングの3つがある。セッティングに携わるのは13名。全員が3つの手法をマスターしているという。とりわけ、ムーブメント自体にダイヤモンドセッティングを施す手法は、世界でも数社しか行えない。

 最後に見せてもらったのが、自社製ムーブメントの開発部門だ。機能を重視するのは当然として、モットーが、美はすべてに勝る、妥協はしない、というのはいかにもシャネルらしい。新しいキャリバー 3.搭載の「ボーイフレンド」を見せてくれた。一見、普通の3針ムーブメントだが、地板と受けを固定するネジが見えない上、歯車も穴のない1枚板だ。その手法は尋常ではない。輪列だけを強調するため、地板と受けは基本的にケースに内蔵された〝耳〟で固定されている。そして、時間を合わせる日の裏機構の大部分も、やはり〝耳〟に内蔵された。今までさまざまなスケルトンウォッチを見てきたが、日の裏機構を隠した例は、本作が初だろう。日の裏機構が小さくなると、普通は針合わせの感触がおかしくなったり、針飛びが起きやすかったりする。しかし、小さな日の裏機構にもかかわらず、キャリバー 3.の感触はスムーズだった。

 さらに驚くべきは、輪列に使われる歯車だ。穴が開いていないだけと思いきや、製法が違っていた。曰く「普通の製法では作れないので、LIGAで製造した」。一種のメッキであるLIGAとは、膜を何層にも重ねて金属部品を生成する手法だ。大量生産には向かないが、精密で薄い部品を作ることができる。おそらくシャネルは、穴を抜かない歯車が重くなることを嫌ったのだろう。部品を薄くできるLIGAを使い、しかも特殊な歯形を与えたのである。「歯車を抜かない初の時計」と関係者が語った通り、確かにこれは世界初の試みだろう。しかし、シャネルは決して声高に語ろうとはしない。

 このムーブメントは仕上げも凝っている。地板と受けは真鍮製。削り出した部品のバリを落とし、面取りをした後に、レーザーで刻印を入れて、さらに極めて硬いADLC(アモルファス・ダイヤモンド・ライク・カーボン)をコーティングする。次にADLCの表面をダイヤモンドカッターで削ったところに、ガルバニック処理を施すことで、金のラインが浮かび上がる。硬いADLCやDLCをムーブメントの表面処理に使うメーカーは少なくないが、あえて削るメーカーは、シャネル以外にはないだろう。理由は言うまでもなく、美のためだ。

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