「TIME TO MOVE 2019」で「これは!」と思った新作(ブレゲ編)

時計特集

ウォッチジャーナリスト渋谷康人の 役に立つ!? 時計業界雑談通信

渋谷ヤスヒト:取材・文・写真 Text & Photographs by Yasuhito Shibuya

バーゼルワールドでの新作発表に代わり、5月中旬にスイスで行われたスウォッチ グループ上位6ブランドの展示会「TIME TO MOVE 2019」。5ブランドの本社工房と1ブランドの展示会を3日間のうちに各半日のツアーで訪れるという強行軍であったが、筆者も幸いにも参加できたので、個人的に「これは!」と思った新作を紹介しよう。
まずはスウォッチ グループが頂点ブランドと位置付ける「ブレゲ」から。

ブレゲの新境地、進化したブルーダイアル

 筆者がブレゲの工房を最初に訪れたのは確か1997年、まだスウォッチ グループ傘下になる前で、現在よりもかなり小規模だったが、それでも美しく非常に良い雰囲気の工房だったことを覚えている。その後、スウォッチ グループが積極的に設備投資を行った結果、工房の規模も設備も素晴らしいものに一変していて、改めて驚いた。

 2019年の新作プレゼンテーションを受けて、まず「これは!」と思ったのは、やはりブルーエナメルダイアルの「クラシック 5177 グラン・フー・ブルーエナメル」。古典的なグラン・フー・エナメル文字盤ながら、新技術で画期的な薄さを実現したモデルだ。その魅力や技術については『クロノス日本版』本誌7月号で広田雅将編集長が詳細に解説しているので、そちらをご覧いただきたい。

「クイーン・オブ・ネイプルズ 8967」と「マリーン レディ 9517」。右の「マリーン レディ 9517」のジュエリーバージョンが「マリーン レディ 9518」だ。

 だが、それ以上に個人的にインパクトを感じたのが「クイーン・オブ・ネイプルズ 8967」と「マリーン レディ 9517」「マリーン レディ 9518」である。“海を彷彿させる新技法”を採用した、マーブル的な模様が光の当たる角度によって鮮やかに変化するラッカーダイアルを採用したレディスモデルだ。

 1990年代に時計工房の取材を始めた頃、ラッカーダイアルはごくあっさりした、味わいの薄いものがほとんど。当時はグラン・フー・エナメルの復刻が始まった頃でもあり、よく比較して論じられたものだ。また当時のラッカーダイアル、特にプレーンなものは、たぶん数層の塗りしか施していないものが多かったと思う。

 しかし、現在のラッカーダイアルは当時とはまったくの別物。一度塗装を施したら時間を置いて乾燥させ、また塗装して再度乾燥させる。この過程を十数回以上も繰り返すなど、たっぷり時間をかけて美しく仕上げられている。「クイーン・オブ・ネイプルズ 8967」「 マリーン レディ 9517」「マリーン レディ 9518」のラッカーダイアルも、十数回のプロセスを経ているとブレゲの担当者は語っていた。

 中でも筆者がぜひ観ていただきたいのが、エッグシェルを彷彿させる伸びやかなトノー型ケースの「クイーン・オブ・ネイプルズ 8967」だ。文字盤も「マリーン レディ」より大型だし、トーンも明るくてインパクトがある。ブルーデニムのストラップも含めて、これまでの“大人の女性のための落ち着いた腕時計”の域を抜け出している。女性はもちろん、これまでブレゲに関心のなかったあらゆる人々を引き付ける魅力がある。

 このテイスト、この技術を使ったモデルをぜひもっと出してほしいと思うのは筆者だけだろうか。

「クイーン・オブ・ネイプルズ 8967」のダイアル。色もデザインもこれまでにないほどスポーティーな印象に。

デニムのストラップも白のライン入りでスポーティー。バックルも新デザイン。

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