GMT進化論 (後編)

時計特集

吉江正倫:写真 Photographs by Masanori Yoshie
鈴木裕之、細田雄人(本誌):文 Text by Hiroyuki Suzuki, Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
この記事は 2018年12月発売の1月号に掲載されたものです。

Gr.3.0
単独調整型12時間主時針+ベゼル固定=2カ国表示

プッシャー操作式の単独調整型12時間針搭載モデル

ジラール・ペルゴ 1966 デュアルタイ

ジラール・ペルゴ 1966 デュアルタイム
時針の単独調整をリュウズではなく、プッシャーで行うタイプ。2時位置側で順送り、4時位置側で逆戻しをする。プッシャーによる時針調整とカレンダーは連動していないが、代わりに8時位置のコレクターで早送りが可能だ。自動巻き(Cal.GP03300-0119)。27 石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SS(直径40mm)。3気圧防水。123万円。問ソーウインド ジャパン☎03-5211-1791

 現在GMTウォッチの主流になりつつあるのは、12時間針(=通常の時針)が単独調整できるタイプである。本来、GMTウォッチが表示するべきホームタイムとは、すなわちグリニッジ標準時のことであり、これは一度設定したら動かすことはない。プロユースに特化するならば、ローカルタイムを表示させておく通常の時針を任意に調整できることのほうが重要であり、1982年に単独調整機構を初めて実用化させたロレックスが、敢えて複雑な12時間針の単独調整に挑んだことも肯ける。しかし我々一般人が使う場合でも、12時間針の単独調整機構には、関連するメリットがある。それは、日付を跨ぐ第2時間帯調整の際に、カレンダー表示と連動させやすいという点だ。現行の12時間針単独調整機は、ほぼカレンダー表示との連動機構が付いているのだが、唯一の例外がこのGP03300系である。連動機構をオミットした理由は、カレンダー表示そのものをインダイアル上のポインターデイトにしたためだ。一方で12時間針の単独調整機構は、使いやすいプッシャー式とされており、こちらのほうが実用面でのメリットは大きい。ちなみにプッシャー式の12時間針単独調整といえば、ルードヴィッヒ・エクスリン博士が設計を手掛けた、ユリス・ナルダンの「GMT±」が有名だろう。94年に初登場したこの機構は、後年に連続型のパーペチュアルカレンダーと組み合わされることで、その真価を存分に発揮することになる。また2000年には、調整は順送り方向のみとなるが、パテック フィリップが〝ルイ・コティエ様式〞のワールドタイムを復活させる際、プッシャー式の12時間針単独調整を盛り込んでいる。

センター同軸GMT針以外の機構を使う第2時間帯表示モデル

 ルイ・コティエが考案した「ワールドタイム」の機能をそのまま用い、表示部分を簡略化することで誕生した「GMTウォッチ」。しかし現代では、改めてGMTウォッチを定義することが難しくなっている。本稿では「センター同軸に24時間表示の副時針を持ち、同じく24時間表示の回転ベゼルを備えて(または組み合わせることが可能で)、主としてホームタイムとローカルタイムのふたつを表示する」モデルを本来的なGMTウォッチと定義したが、実際それすらも怪しくなってきている。ではGMT以外の第2時間帯表示モデルには、どのようなものがあるのか? まずGMTの原型となったコティエ様式の「ワールドタイム」は、2000年にパテック フィリップが復刻。ユリス・ナルダンの「GMT±」は、センター指針表示ではなく、ディスク表示の「デュアルタイム」となった。ケース両面にダイアルを持ち、異なった時間帯を表示できる「レベルソ」も、デュアルタイムとして用いるには便利だろう。

パテック フィリップ ワールドタイム Ref.5230

パテック フィリップ ワールドタイム Ref.5230
コティエ様式ワールドタイマーで数少ない、時針の単独調整機能を搭載。10時位置のプッシャーは24時間および都市リングを回転させる。自動巻き(Cal.240 HU)。33石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KWG(直径38.5mm)。3気圧防水。519万円。問パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター☎03-3255-8109
ユリス・ナルダン デュアルタイム マニュファクチュール

ユリス・ナルダン デュアルタイム マニュファクチュール
第2時間帯を9時位置の窓で表示。8時と10時位置のプッシャーで時針の単独調整が可能で、連動して日付を前後に送れるほか、リュウズを用いて早送りも可能。自動巻き(Cal.UN-334)。49石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。SS(直径42mm)。50m防水。世界限定1846本。110万円。問ソーウインド ジャパン☎03-5211-1791

ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ・デュアルタイム
時針と同じ、12時間でダイアルを1周する副時針を有する。第2時間帯は副時針で示したインデックスの通りに読み取り、それが午前か午後かは9時位置の昼夜表示から判断する。自動巻き(Cal.5110 DT)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径41mm)。15気圧防水。270万円。問ヴァシュロン・コンスタンタン TEL:0120-63-1755

ジャガー・ルクルト レベルソ・クラシック・ミディアム・デュオ・スモールセコンド
レベルソ・デュオはひとつのムーブメントで表裏、2面のダイアル時間をそれぞれ独立して表示可能。第2時間帯を示す裏ダイアルには、昼夜表示が備わる。手巻き(Cal.854A/2)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(縦42.9×横25.5mm)。3気圧防水。93万円。問ジャガー・ルクルト TEL:0120-79-1833

日本時間はホームタイム? ローカルタイム?

 GMTウォッチの操作で最も厄介な問題は「ホームタイム」の定義だろう。模範解答を先に言ってしまえば、本来のホームタイムとは「GMT±0」の時間帯以外には有り得ないのだが、GMTを日常的に用いない我々にとっては、「GMT+9」である「日本のローカルタイム」を「ホーム」として使いたい気持ちも分かる。では、GMT+9の時間帯で使う場合、針のセッティングにはどんなパターンがあるのか見てみよう。
①は時針、副時針ともにGMT+9のローカルタイムで午前10時8分に合わせた例。この場合の副時針は単にデイ&ナイト表示となるが、このセッティングで使う人が大半だろう。
②はベゼルだけを動かして、副時針にGMT±0を表示させた例。
③は本来の使い方どおりに、副時針をGMT±0の午前10時8分に合わせ、メインの時分針にGMT+9のローカルタイムを表示させた例。
④はこのセッティングのまま、GMT+9が午前10時8分になった際の、GMT副時針の針位置を表している。

Recommend おすすめ記事

News ニュース