トミヤ代表取締役社長・古市聖一郎氏に聞く/時計の賢人、その原点と「上がり時計」

時計特集

安堂ミキオ:イラスト

 時計の賢人たちの原点となった最初の時計、そして彼らが最後に手に入れたいと願う時計、いわゆる「上がり時計」とは一体何だろうか? 本連載では、時計業界におけるキーパーソンに取材を行い、その答えから彼らの時計人生や哲学を垣間見ていこうというものである。
 今回話を聞いたのは、岡山市内を中心に時計・宝飾店など14店舗を展開するトミヤコーポレーションの代表取締役社長、古市 聖一郎氏だ。古市氏は原点としてタグ・ホイヤー「プロフェッショナル・フォーミュラ1」を、「上がり」時計にはパテック フィリップ「ミニット・リピーター トゥールビヨン Ref.5539」を挙げた。若き経営者、古市氏の眼差しの先を見てみたい。

今回取材した時計の賢人

古市聖一郎

古市 聖一郎 氏
株式会社トミヤコーポレーション/代表取締役社長

1979年、岡山市生まれ。1932年に創業したトミヤコーポレーションの3代目。2004年にトミヤコーポレーションへ入社し、同年に路面店としては国内最大級のフランクミュラーブティック「フランクミュラーbyトミヤ」の立ち上げを担う。2010年より現職。先代から継いだ腕時計への造詣と自身の優れたセンスを活かし、腕時計を中心に多岐にわたる店舗展開を行う。2019年8月13日には、腕時計やジュエリーのみならず、フレグランスやアイウェアも取り扱う「トミヤ 倉敷店」をオープンする

【トミヤ】公式ウェブサイト:https://www.tomiya.co.jp/


原点時計はタグ・ホイヤー「プロフェッショナル・フォーミュラ1」

Q. 最初に手にした腕時計について教えてください。

A.1990年、岡山にTIサーキット英田(現・岡山国際サーキット)が建設されました。トミヤでもそれにちなんだイベントを実施し、表町の商店街でF1カーを展示したり、タグ・ホイヤーフェアを実施したりしました。「プロフェッショナル・フォーミュラ1」は、その記念に父親がプレゼントしてくれた時計です。私が小学5年生くらいのことでした。着用後はいつも円柱型の箱に綺麗に収めて、宝物として大事にしてきました。

古市聖一郎

古市氏の原点時計は、F1をイメージして1986年に誕生したタグ・ホイヤー「プロフェッショナル・フォーミュラ1」。


「上がり」時計はパテック フィリップ「ミニット・リピーター トゥールビヨン Ref.5539」

Q. いつしか手にしたいと願う憧れの時計、いわゆる「上がり時計」について教えてください。

A. パテック フィリップのコンプリケーションは、購入前の審査などが厳しく、誰でも手に入れられるものではないので、時計業界にいてもやはり特別な存在です。中でもミニッツリピーターには憧れますね。出荷する時計の音色をティエリー・スターン社長自身が確認しているという話を聞いたことがあります。そういったエピソードや、見た目のシンプルさと裏腹な機構の複雑さに引かれます。
 また、たとえいつか手に入れられるだけの経済力が身に付いたとしても、私にとって「上がり」時計は自分の仕事に納得していなければ購入できない存在だとも思っています。まずはここ数年で増やした新店を十分に成長させて、社員の暮らしをより良くし、岡山全体を盛り上げることが課題です。そして、これはAJHH(日本正規高級時計協会)の仲間たちともよく話していることですが、腕時計を着ける文化をより根付かせる啓蒙活動を行うことが、私の長期的な目標です。いつか達成感を得て、「上がり」時計を手に入れるに相応しくなりたいと考えています。

古市聖一郎

古市氏の上がり時計はパテック フィリップの「ミニット・リピーター トゥールビヨン Ref.5539」。2本のクラシック・ゴングとミニット・リピーターとトゥールビヨンを備え、ブラックエナメルダイアルを採用する。


あとがき

 新しくオープンする「トミヤ 倉敷店」の見学で岡山を訪れる機会があり、岡山での時計市場の大きさに驚いた。これは創業87周年を迎えるトミヤコーポレーションが、長年にわたり岡山での時計の魅力発信に尽くされてきた賜物なのだろうと感じた。また取材では古市聖一郎氏の父親である会長の古市大藏氏から話を聞く機会もあり、大藏氏の真摯な経営理念は聖一郎氏にしっかり継がれている様子を垣間見た。
 聖一郎氏は、腕時計が必需品ではなくなりつつある今日において、腕時計の位置付けはフルコースに添えられるデザートのように人生を豊かにするものだと自身の見解を語る。新しい感性で業界の未来を見据える聖一郎氏の姿に、近い世代の人間として筆者も気持ちが引き締まる思いだった。

高井智世


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