ブレゲ トゥールビヨン傑作選 (後編)

時計特集

ブレゲは毎年6月26日を「トゥールビヨン・デイ」と称して、記念イベントを世界各地で開催している。この日が特別なのは、創業者の時計師アブラアン-ルイ・ブレゲがフランス革命時代の共和暦第9年メシドール7日、すなわち1801年6月26日にトゥールビヨンの特許を取得した日にあたるからだ。2世紀以上を経た今もトゥールビヨンはブレゲの代名詞であり、ブランドの中核をなす最高峰の複雑機構にほかならない。その偉大な伝統を継承しながら、革新的技術を投入して進化を続ける現代ブレゲによるトゥールビヨンの傑作を紹介する。

奥山栄一:写真 Photographs by Eiichi Okuyama
菅原 茂:文 Text by Shigeru Sugawara

Tradition Tourbillon Fusée 7047

2005年にスタートした「トラディション」は、アブラアン-ルイ・ブレゲが考案した伝説の1本針時計「スースクリプション」からインスピレーションを得て、その典型的なムーブメント構造をフェイスのデザインに応用し、伝統と前衛という一見相反する要素を見事に両立させたコレクションである。中でも極め付きは、トゥールビヨンの発明時に近い構造と古典的な鎖引き装置によるコンスタントフォース機構を併せ持つ、この絶妙な7047だ。

トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047
Cal.569
トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047
「トラディション」初の複雑時計として2007年に発表され、2012年には一段と優美なローズゴールドモデルが登場した。ムーブメント両面に施されたローズゴールド色のグルネ仕上げも18世紀から19世紀の典型的なブレゲの懐中時計を彷彿とさせる。手巻き(Cal.569)。43 石。1万8000 振動/ 時。パワーリザーブ約50時間。18KRG(直径41mm)。3気圧防水。1901万円。

香箱の主ゼンマイがほどけるにしたがって左側の円錐滑車(フュゼ)に巻き付いた鎖が右側の香箱に巻き取られ、円錐滑車の中心寄りの小さい径から外周寄りの大きい径へと鎖が移行するため、てこの原理が働き、常に一定の動力(コンスタントフォース)を輪列に供給することができ、トルクが安定する。なお、鎖は155個の微細なスティール製リンクから成る。

古典の型破りな新解釈 ワン&オンリーの個性

 ブレゲの現行の複雑時計の中には、もしも今、アブラアン-ルイ・ブレゲが生きていたなら、こんな腕時計を考案したのではなかろうかという想像を掻き立てる複雑時計がいくつもあるが、「トラディション トゥールビヨン・フュゼ7047」は間違いなくそのひとつだ。ムーブメントがあらわになり、メカニズムのエレメント自体がフェイスを形作る「トラディション」特有のデザインを踏襲して2007年に初めて発表されたこのトゥールビヨンは、シンメトリーを保ちながら意図的にずらしてレイアウトされた4つの主要パーツが唯一無二の個性を発揮する特異なモデルだ。

 まず目を奪うのがカンチレバー型の片持ちブリッジで支えられた巨大なトゥールビヨンキャリッジ。その外観は、1801年にアブラアン-ルイ・ブレゲが特許を取得したオリジナルの設計に通じる古典的なものだが、チタンを採用して軽量化を図ったキャリッジとテンワ、シリコン製ブレゲ式ヒゲゼンマイなど、先端技術では近年の革新の結晶と言える。 トゥールビヨンと対称の位置で存在感を放つのは、ギヨシェ彫りで装飾されたオフセンターダイアル。このダイアルを左右から挟み込むように置かれているのが、鎖を介して連動する香箱と円錐滑車(フュゼ)である。動力伝達を一定に保つコンスタントフォース機構をトゥールビヨンに組み合わせ、安定した高精度の実現を目指す方法は、1808年に販売された傑作トゥールビヨン「№1188」と同様で、その現代版はまさに「古典と前衛との融合」を象徴している。

ボックス型サファイアクリスタル越しに見えるムーブメントは、まるでミニチュア化されたブレゲ・ミュージアムのよう。トゥールビヨンキャリッジは時刻表示のオフセンターダイアルとサイズを合わせ、チタンを使うことで可能な限り大型化と軽量化が図られた。左上の香箱には差動減速システムのパワーリザーブ表示が備えられ、右下の円錐滑車「フュゼ」は糸を巻き付けたスピンドルに由来する。

Recommend おすすめ記事

News ニュース