今もって最高峰!レベルソ・グランド・コンプリカシオン・トリプティック

時計特集

ジャガー・ルクルト「レベルソ・グランド・コンプリカシオン・トリプティック」

 ジャガー・ルクルトといえば、今もって複雑時計の雄である。同社が複雑時計を作れた理由は、薄型ムーブメントの製作を得意としてきたためだ。機構の省スペース化に長けていたジャガー・ルクルトは、そのノウハウを磨き上げることで、1990年代以降、複雑時計に様々な機能を盛り込むことに成功したのである。しかも、それらは高い信頼性を伴っていた。

レベルソ・グランド・コンプリカシオン・トリプティック

レベルソ・グランド・コンプリカシオン・トリプティック
レベルソ75周年記念モデル。3つの面に、18もの機能を載せた超複雑時計である。脱進機には、デテントの改良版である楕円等長式脱進機を採用する。極めて精密な天体と星座表示に加えて、均時差表示、操作の極めて容易な永久カレンダーなどを備える。なお、本作の発売を記念して、ジャガー・ルクルトはわざわざ専門の本を作った。手巻き(Cal.175)。79石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KWG(縦55×横37.72mm、厚さ17.9mm)。30m防水。限定30本。2019年8月末の定価、33万9000ユーロ。
広田雅将(本誌):文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

 その中の最高峰のひとつは、間違いなく2009年に発表された「レベルソ・グランド・コンプリカシオン・トリプティック」だろう。ケースを反転できるレベルソの特長を生かして、このモデルは、3つの文字盤(文字盤表側、ムーブメント側、ケースを支えるケースキャリア)に、18もの機能を表示する。

 文字盤側に備わるのは、時分針と24時間表示、そしてトゥールビヨン。しかしありきたりのトゥールビヨンではなく、脱進機にはデテントの改良版である、楕円等長式脱進機が採用された。この脱進機は効率が極めて高いため、パワーリザーブは約48時間、テンワの慣性モーメントは11.5mg・cm2もある。また無注油のため、長期間にわたって精度は安定する。理論上は非常に優れた脱進機だったが、コストがかかるため採用されたのは本作のみだ。複雑時計であることと高精度を両立させるのは難しいが、本作はその両立を目指した、希有な例と言えるだろう。時計好きならば、この脱進機だけで買う価値があるのではないか。

 その裏側には天空表示プレートが付いた星座カレンダー、均時差表示、そして太陽の運行を表わす表示が備わる。恒星日を正確に表示するため、天体と星座表示ディスクの回転は極めて厳密にコントロールされており、1回転に要する時間は24時間ではなく、23 時間 56 分4秒である。加えて回帰年と、日の出日の入りを表示する均時差表示を用いることで、天文表示を正確に読み取ることが可能だ。

レベルソ・グランド・コンプリカシオン・トリプティック

恒星時、天空表示プレート、均時差表示、星座カレンダー、日の出日の入り時間と均時差表示を持つケースバックと、永久カレンダー、レトログレード式の日付、針による曜日、月、閏年、ムーンフェイズ表示を備えたケースキャリア。日付変更調整中にケースの回転を防ぐためのロック メカニズムを備える。

 このモデルでいっそう興味深いのは、ケースバックに設けられた永久カレンダーである。動力源はケースに格納されたムーブメント。午前0時になると、内蔵されたレバーが動いて、ケースキャリアの中にある作動装置を引っかけ、すべてのカレンダーを瞬時に切り替える。瞬時に切り替わるため、トルクのロスが小さく、理論上は極めて安定した精度を誇る。もっとも、ちょっとした気遣いは必要だ。正しい表示を得るには、午前0時の時点で、ケースをキャリアに収めておく必要がある。でないと、レバーと永久カレンダーは噛み合わない。しかし、日付変更の調整は手動で行えるため、仮に外れた状態でも問題ない。しかも、午前0時以外は動力が噛み合わないため、どのように調整してもムーブメントを壊すことがない。

 レベルソの特長を生かして、3つの面に18もの機能を埋め込んだ超大作、レベルソ・グランド・コンプリカシオン・トリプティック。普通、こういった野心作は、どこかしら破綻をきたす。しかし、そうでないのはさすがジャガー・ルクルトだ。高い精度と精密な天文表示、そして使い勝手に優れた永久カレンダーの組み合わせは、今もって同社製複雑時計の最高峰だ。

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