なぜ、ゼニス「デファイ インベンター」は革新的なのか?

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デファイ インベンターはスタンダードになれるか

 もっとも、この脱進機には弱点もある。テンワ、ヒゲゼンマイ、緩急針、ヒゲ持ち、アンクルに相当する部品を一体成形したため、ゼニス オシレーターはムーブメント全面を覆うほど大きくなったのである。当然ながら、大きな部品は、強いショック(外乱)に弱い。対してギィ・セモン率いる技術陣は、縦横、上下の変形を規制するフレームを付けて、オシレーターの変形を抑えた。また、今までの摩擦停止脱進機と違い、止まっても再起動する。こういった安全装置をきちんと盛り込んだ点が、他の実験的な調速脱進機との大きな違いなのである。

限定モデル→量産モデルの主な改良点
・振動数を10万8000振動/時から12万9600振動/時に向上
・耐衝撃性をさらに改善
・ケース素材をアエロナイトからTiとアエロナイトのコンビに変更

ゼニス, デファイ インベンター

2017年の限定版「デファイ ラボ」は、アルミニウムとポリマーで構成されるアエロナイトをベゼルとミドルケースに採用していた。対して量産版のデファイ インベンターでは、ケースがチタンに変更された。チタンはアエロナイトほど軽くないが、耐蝕性には優れている。量産版には適切な選択だろう。


 加えて、ゼニス オシレーター量産にあたって、ゼニスはさらに手を加えた。振動数をさらに高めて携帯精度を改善(30→36振動)したほか、オシレーターも、いっそう強固に保持されるようになったのである。

 機械式時計の問題であった、平立差、脱進機誤差、そして温度係数を限りなく抑えたのみならず、市販機として使えるだけの安全性を得たゼニス オシレーター。これを搭載するデファイ インベンターは、本当の意味で、機械式時計のあり方を変える時計になるかもしれない。プロトタイプとしてならば、これよりも考えられたものはある。しかし、量産まで考慮したという点で、これはまさしく、ホイヘンス以来の発明だろう。

ゼニス, デファイ インベンター

ゼニス オシレーターを搭載した超高精度機。2017年にリリースされた、デファイ ラボの量産版である。理論上は日差±0.3秒以内の精度と、1000ガウス以上の超耐磁性を誇る。自動巻き(Cal.9100)。18石。12万9600振動/時。パワーリザーブ約50時間。Ti×アエロナイト(直径44mm)。10気圧防水。204万円(税別)。ラボは10モデル×10本の限定だったが、本作は非限定である。

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