「TIME TO MOVE 2019」で「これは!」と思った新作(ジャケ・ドロー編 Part 1)

時計特集

5月中旬にスイスで開催されたスウォッチ グループのプレステージ&ラグジュアリー レンジの6ブランドの展示会「TIME TO MOVE 2019」において披露された新作で、個人的に「これは!」と思ったモデルを紹介する連載企画。第7回はジャケ・ドローの新作「マジック・ロータス・オートマトン」をお届けする。

渋谷ヤスヒト:取材・文・写真 Text & Photographs by Yasuhito Shibuya

ジャケ・ドロー「マジック・ロータス・オートマトン」

マジック・ロータス・オートマトン

東洋的な死生観をオートマトンで表現

 時計師として以上に、オートマトン(自動からくり機械/自動人形)の製作者として歴史に名を残すピエール-ジャケ・ドローとその息子アンリ・ルイのジャケ・ドロー父子。中でも、1774年にラ・ショー・ド・フォンで発表した「文筆家」(The Writer)、「画家」(The Draughtsman)、「音楽家」(The Musician)という3体のオートマタ(自動人形)は傑作中の傑作として知られている。

 その名前と志を受け継ぎ、美術工芸品の極みとも言えるメカニズムを備えた時計づくりを展開しているのがジャケ・ドローだ。

「TIME TO MOVE 2019」では、ラ・ショー・ド・フォンのジャケ・ドロー本社で、新作のプレゼンテーションと工房見学が行われた。

これが「フィフティ ファゾムス バラクーダ」のオリジナルモデルである。ベゼルやアクリル風防に時代を感じる。

 新作の中でも、最も気になった、というか心を惹かれたのが、今回紹介する「マジック・ロータス・オートマトン」である。ホワイトゴールドとレッドゴールドのケースで、それぞれ世界限定28本製作される。四季の移り変わり、それに伴う生命の輪廻転生を、蓮の花と水中を泳ぐ鯉、ふたつのオートマトンの組み合わせと動きで表現した腕時計だ。

 4つの特許を申請中というこのオートマトンウォッチ、川に見立てられた回転する文字盤の外周部分を、鯉や水に落ちた蓮の花が回転しながら30秒に1回のスピードで8回、つまり4分間回転してさまざまな動きを見せる。

 感心させられるのは、小さなこのメカニズムの中に仕込まれた趣向だ。水に落ちたという設定で秋を表している蓮の花びらは、中央に出現する宝石が、ブルーサファイア、イエローサファイア、ルビーとランダムに変わる。また川の中を泳ぎ回る錦鯉は、尾びれを左右に振るばかりでなく、水上に姿を現しては潜るような、上下の動きも加味されている。

 また、8時と9時の間にいるトンボも、パワーリザーブインジケーターとしてオートマトンの作動とともに空中から蓮の葉の上へと移動する。

 ゴールドや宝石、マザー・オブ・パール、グランフー・エナメルで表現された花や鯉の精緻な美しさは、写真をご覧いただければ、改めて言うまでもないだろう。

 約3年という歳月をかけて、こうした腕時計の企画製作に取り組むエンジニアやデザイナー、時計師ら職人たちの情熱には頭が下がる。

 また、こうした腕時計の価値を認めて購入する、つまりブランドのパトロン役を務める顧客の人々に改めて敬意を表したい。

 なお、YouTubeにアップされているオフィシャルの動画も素晴らしいので、下記動画よりぜひ楽しんでいただきたい。

マジック・ロータス・オートマトン

マジック・ロータス・オートマトン
自動巻き(Cal.Jaquet Droz 2653 AT2/オートマトン機構は手巻き)。56石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。18Kレッドゴールド(直径43mm)。3気圧防水。世界限定28本。予価2283万円(税抜)。


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