ゼニス「エル・プリメロ」が変革したクロノグラフの歴史(前編)

時計特集

活躍の場を広めたエル・プリメロ

 エル・プリメロはセンターローターによって主ゼンマイを巻き上げる。この巻き上げ効率を高めるべく、ローターの外周部分に比重の高いタングステンカーバイドを一部使用し、着用者のわずかな動きでもローターが回転するように調整されているのだ。クロノグラフは12時間まで計測できるようになっており、そのスタート/ストップ/リセット制御にはコラムホイールが用いられている。なお当時、他のウォッチメーカーの多くは生産コストの低いカム式を採用していた。また4時位置には真夜中に瞬時に変わる、クイックコレクトデイト機能付きのカレンダーも設けられていた。

 エル・プリメロはスタート直後から2種類のバージョンが生産されていた。ひとつはキャリバー3019PHCでデイト表示付き、もうひとつはキャリバー3019PHFでフルカレンダーとムーンフェイズ表示が搭載されていた。エル・プリメロのような高振動機は重力や衝撃などの外部からの影響を受けにくいため、時間計測において高精度を保つことが可能となる。しかし、高振動のため、機械の磨耗もその分多く、エル・プリメロは頻繁にメンテナンスを受ける必要のあるムーブメントであった。

ゼニス, エル・プリメロ

エル・プリメロにはフルカレンダーにムーンフェイズを組み合わせたものもある。

 エル・プリメロはゼニスの数々のコレクションの時間計測に貢献していただけでなく、10年以上にわたって「それとは知られず」に活躍したムーブメントでもあった。ロレックスはエル・プリメロに手を加えて、「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」に88年から搭載し始めた。これによってデイトナは自動巻き機構を得たのである。ロレックスはいくつかの技術的な部分改良を加えた上で、ゼニスのキャリバーを2000年まで搭載し続けた。振動数を2万8800振動/時まで落としたほか、ロレックスはテンワにマイクロステラナットを取り付け、フリースプラングとすることで、精度や耐衝撃性に関する社内基準を満たしていたのだ。ほかにもエル・プリメロを何年にもわたって搭載していたブランドは多く、モバード、エベル、ダンヒル、デュボワ&フィス、タグ・ホイヤー、ダニエル・ロートなどが挙げられる。

ゼニス, エル・プリメロ, モバード

エル・プリメロは何年もモバードやタグ・ホイヤーなど、他のブランドでも使われ続けてきた。

Recommend おすすめ記事

News ニュース