現代的ダイバーズウォッチの原点「フィフティ ファゾムス」誕生を伝えるブランパンのドキュメンタリー映画(後編)

時計特集

ブランパン元CEO、ジャン-ジャック・フィスターが自身のダイビング経験をふまえて開発に乗り出したフィフティ ファゾムス。防水性が高く、一目で潜水時間が把握できる時間計測機器が必要だという認識のもと、二重Oリングを備えるダブルシールのリュウズや、誤作動防止のロック機能付き回転ベゼルが開発され、製品化を迎えた。
同じ頃、フランス海軍のダイバー、ボブ・マルビエ大尉は、任務遂行に有効な、信頼性の高いダイバーズウォッチを必要としていた。
ブランパンが制作したドキュメンタリー映画『Fifty Fathoms The History as told by the pioneer who created it(フィフティ ファゾムスと、それを作り上げたパイオニアたちが語った歴史)』によって、現代的ダイバーズウォッチの原点「フィフティ ファゾムス」の歴史的価値が見直されている。誕生経緯を伝えた前編に続き、後編をお届けする。

●「現代的ダイバーズウォッチの祖『フィフティ ファゾムス』の誕生を伝えるブランパンのドキュメンタリー映画(前編)」を見る
https://www.webchronos.net/features/37816/

Originally published on watchtime.com
Text by Logan R. Baker

アメリカ海軍での採用

 ダイビング装備の製造業者スピロテクニーク(後のアクア・ラング)の引き合わせによって出会った、ボブ・マルビエ大尉とブランパン元CEOのジャン-ジャック・フィスター。フィスターとブランパンは喜んでフランス海軍に提供する時計を開発した。このドキュメンタリーではフランス海軍の意見により軟鉄製耐磁インナーケースが追加されたことを裏付けている。瞬く間にブランパンの成功のうわさは広まり、間もなくフィフティ ファゾムスは世界中の海に関わる人たちから求められるものとなった。ジャック=イヴ・クストーは1956年のドキュメンタリー映画『沈黙の世界』の撮影中にフィフティ ファゾムスを着用し、ドイツ軍はねじ込み式リュウズを追加したモデルを兵士用に発注した。なおこの後ほどなくして、ブランパンは女性のダイビング愛好家に向けたフィフティ ファゾムスの派生モデル「バチスカーフ」を発表している。
 そしてその後、当時アメリカの代理店「トルネク-レイヴィル」のアレン・V・トルネクの働きかけによって、米国の軍事契約を目指す時計のブランドリストにブランパンが加えられ、そのなかからフィフティ ファゾムスが選ばれた。つまりフィフティ ファゾムスはフランス、ドイツに続きアメリカ海軍御用達時計の座をも獲得したのである。いずれのブランドも全て、アメリカ海軍のテストを受けるために時計を供給していたが、その中からフィフティ ファゾムスだけが求められた基準を満たしたのであった。

フィフティ ファゾムス

1950年製のフィフティ ファゾムス。LIP銘が記されているように、ブランパンはさまざまなブランドを通じてフィフティ ファゾムスを納入した。自動巻き。参考商品。

 ドキュメンタリー制作にあたり、キングストンは十分なリサーチを重ね、アメリカ海軍からの報告書にも目を通した。しかしこの時期に関しては、トップシークレットであったため数十年ものあいだ開示されなかった内容でもあり、明確な詳細情報を存分に得ることができなかった。業を煮やしたキングストンは、さらにリサーチの範囲を広げていった。

「ある日気まぐれを起こして、トルネクについてインターネットで検索してみた。これが好機になって、彼の新しい一面を見つけることができた。そしてトルネクについて語る幅が少しだけ広がったと思う」とキングストンは語る。「カリフォルニア州パサデナで市長をしているテリー・トルネクという人物を見つけ、市長室に電話をかけてみた。なんと彼はトルネクの息子で、そしてその兄のラリーはアメリカ海軍が時計をテストする過程にも関与しており、父親がやったことの多くを覚えていた。テリーとラリーと出会ったおかげで、当時のアメリカ海軍が時計に求めていたものについて、より詳しく知ることができたという訳だ」。

フィフティ ファゾムス

1965年から70年にかけて製造された、旧西ドイツ海軍向けのモデル。自動巻き。参考商品。

 ドキュメンタリー映画の前半は、1983年にブランパンがフレデリック・ピゲに買収されるところで終わる。この頃、ドレスウォッチやコンプリケーションウォッチが脚光を浴び、フィフティファゾムスのコレクションは残念ながら、脇によけられることとなっていたのだ。

フィフティ ファゾムス

1970年代に製造された、旧西ドイツ海軍向けのモデル。自動巻き。参考商品。


現代のダイバーズウォッチの起源について真実を伝える

 後半はジュウ渓谷からのドローン撮影による、なめらかな映像で幕を開け、どのようにしてビバーがスウォッチ グループ(当時SSIH/ASUAG)による買収以前に、ブランパンに以前の輝かしさを取り戻させたかの詳細が語られる。後半は前半に比べると短く、フィフティ ファゾムスの現在の外観を定義した1997年の陸・海・空のトリロジーコレクションから、2007年の新しい自社製ムーブメントを搭載したフィフティ ファゾムス コレクションの再生や、現代のダイビング用計測機器としての技術的極みを目指したフィフティ ファゾムスの派生モデル「Xファゾムス」の発表についての詳細に触れている。そして、自身も日常的にダイビングをたしなむCEOのマーク A・ハイエックが、ブランパン オーシャン コミットメント シリーズの立ち上げ、そしてローラン・バレスタのゴンベッサ・プロジェクトなどさまざまな試みに対するブランドのサポートについても言及している。

フィフティ ファゾムス

2011年に発表された「Xファゾムス」の現在のモデル。自動巻き。直径(55.65mm)。300m防水。

 エミー賞者であるピーター・コヨーテがナレーションを担当している『フィフティ ファゾムスと、それを作り上げたパイオニアたちが語った歴史』は、世界中の時計愛好家にとっての新しい参考文献となるだろう。ダイバーズウォッチは流通規模の大きな時計のひとつであり、キングストンはその最初の1本のストーリーに息吹を吹き込みたかったのだ。

「神話の世界を、世に知らしめたかったのです」とキングストンは語る。「現代のダイバーズウォッチの起源については、多くの神話があり、他の会社でも自らが最初の時計だという話が、そしてフィフティ ファゾムスと同じ時期に作られたという話までが語れています。でも、単純にそれは事実ではないということです。私は同時にフィスターが真のパイオニアであるということを知ってもらいたかった。そしてこれが本当の最初のダイバーズウォッチであり、これによりダイバーズウォッチというジャンルは定義され、今日に至るのであると」。


Contact info: ブランパン ブティック銀座 Tel.03-6254-7233

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