超絶クォーツ、ザ・シチズン キャリバー 0100、渾身の使用レポ!

時計特集

奥山栄一、三田村優:写真 Photograph by Eiichi Okuyama, Yu Mitamura
白苺:文 Text by Shiroichigo

2019年に発表されたのが、年に1秒しか狂わないというザ・シチズン キャリバー0100搭載機だ。クロノス読者であり、時計コレクターとしても知られる白苺氏が、購入してテストを行った。現時点で世界で最も正確な量産型腕時計は、彼に一体どんな印象を残したのだろうか?

ザ・シチズン キャリバー0100搭載モデル

ザ・シチズン キャリバー0100搭載モデル
年差±1秒という超高精度を誇るCal.0100を搭載したモデル。著者が購入したのは右側である。光発電エコ・ドライブ(Cal.0100)。17石。838万8608Hz。パワーリザーブフル充電時6ヵ月、パワーセーブモード時8ヵ月。スーパーチタニウム(設計値/直径37.5mm、厚さ9.1mm)。5気圧防水。(右)Ref.AQ6020-53X。世界限定200本。(左)Ref.AQ6021-51E。世界限定500本。各80万円。


創業100年を迎えたシチズン

 シチズンは2018年に年差±1秒のムーブメント、Cal.0100(キャリバーゼロイチゼロゼロ)を発表した。2018年は、貴金属商で貴族院議員の山崎亀吉が尚工舎時計研究所(現シチズン時計)を創業してから100年にあたる。同社を始めとして年差を標榜するクォーツを製造するメーカーはいくつかあるが、高精度版とされるもので年差±5秒程度であり、±1秒という数字は大きな驚きを持って迎えられた。
 発表されたムーブメントが収められた状態が懐中時計だったこともあって、Cal.0100は創立100周年を祝うアドバルーン的な存在であり、腕時計として実際の製品が量産されるには時間がかかるのでは、と受け止められもしたが、わずか1年後の今年2019年、シチズンは腕時計として実際に発売したのである。

Cal.0100のコンセプトモデル

Cal.0100のコンセプトモデル
2018年に発表されたCal.0100を搭載したコンセプトモデル。年差±1秒を実現するため、シチズンは一般的なクォーツ式ムーブメントが使用する「音叉型水晶振動子」ではなく、「ATカット型水晶振動子」を採用している。また振動数も838万8608Hzに向上している。

 シチズンにとって有名な逸話に以下のようなものがある。

 昭和2年(1927年)の名古屋における陸軍の晩餐会で、コーヒーを楽しみながらの歓談中、一人の紳士が昭和天皇に手持ちの時計を見せ「陛下、これは外国製でございますが、まことによく合います。日本製のものはどうも不正確でまだまだ到底、外国製には及びません」と申し上げたところ、昭和天皇は無造作にズボンの右ポケットから懐中時計を取り出し「私のこの時計は12円50銭の国産品だけれども、とてもよく合うよ」と嬉しそうに示したのが、尚工舎が発売したばかりの同社第1号モデル「CITIZEN(16型)」だった(参考:シチズンミュージアム所蔵の書籍)

CITIZEN(16型)

昭和天皇の愛用したシチズンの懐中時計
昭和天皇の愛用した時計が、尚工舎(現シチズン)の第1号モデルである「CITIZEN(16型)」である。昭和天皇の皇太子時代に侍従を務めた木下道雄が京橋の山崎商店で2個購入し、ひとつは昭和天皇に寄贈。ひとつは木下自身が愛用した。これは木下の寄贈品である。


 尚工舎時計研究所の成立は1918年だが、実際に製品が出荷されたのは1924年のことであった。その際に付けられたブランド名が「シチズン」であり、創立者の山崎と親しく、当時東京市長を務めていた後藤新平が「市民に親しまれるように」との意で名付けたと言われている。シチズンは今でも「永く広く市民に愛され市民に貢献する」との社是を掲げており、同社が1981年に製造を始めたクォーツムーブメント2035とその派生機は、製造数が数十億個に及び、世界中のアナログクォーツ時計のスタンダードとなった。

世界標準のクォーツムーブメント、Cal.2035
メイド・イン・ジャパンを象徴するクォーツムーブメントが、シチズン(ミヨタ)の開発したCal.2035である。大量生産に特化した設計により、圧倒的な低価格を実現した。しかしその精度は月に±20秒以内。加えて高い耐衝撃性を持つ。クォーツムーブメントの世界標準機。


正確さと使い勝手の良さを追求して生まれたエコ・ドライブ

 私には、シチズンの時計が一貫して求めてきたコンセプトが、ふたつあるように見受けられる。ひとつは高精度化であり、もうひとつは電池を気にすることなく使える利便性である。高精度化については、シチズンは機械式腕時計時代にもチャレンジをしており、例えば著名なゼニス135クロノメーターと同径の大きなテンワを持つ「シチズン・クロノメーター」や高振動の「グロリアスシチズン」などを製造した。ブローバとの関係が深かったことで、音叉時計の製造を熱心に行っていたこともあり、クォーツ時計の製造は1973年と、世界初を競い合ったセイコーなどのメーカーよりも4年遅れたが、2年後の1975年には当時世界最高の精度である年差±3秒を標榜した「クリストロン メガ」を製造するなど、高精度クォーツの分野ではその後も先進的な時計を製造してきた。

シチズン クリストロンメガ

最高精度を実現したシチズン クリストロンメガ
1975年に発表されたクリストロン メガは、年差±3秒という超高精度を誇った。その設計や技術を下敷きにしたのが、2018年の年差クォーツ、Cal.0100である。クォーツ(Cal.8650)。18KYG。限定3000個。なお当時の定価は450万円だった。

 その一方で1976年にはソーラー時計を発表しており、(クリストロン メガこそ高振動化・高精度化の影響で電池寿命は1年と極端に短かったが)電池交換という手間を意識させずに時計を日常的に使ってもらおう、という意欲を示したのであった。もっとも太陽光発電時計が実用的になるには1995年のエコ・ドライブの登場を待つ必要があった。日常的な精度を高めるという観点から、シチズンは1993年に電波時計の製造を開始した。電波時計やGPSとエコ・ドライブの組み合わせは、もはや時間合わせやメンテナンスの必要性を感じさせないもので、使用する人々にあまねく正確な時間をもたらすことになった。

アテッサ エコ・ドライブ

エコ・ドライブの先駆けとなったアテッサ エコ・ドライブ
シチズンは1976年に、「クリストロン ソーラーセル」で光発電を実現していたが、メインに躍り出たのは1995年11月に発売された「アテッサ エコ・ドライブ」以降である。同社は光発電を搭載したアテッサを「ソーラーパワー」の名称で販売していたが、95年に名称をエコ・ドライブに改めた。軽いチタンケースとエコ・ドライブの組み合わせはアテッサを大ヒット作に押し上げることとなる。Cal.850搭載。当時の定価4万円。


極限の正確さを追求したザ・シチズン

 その一方でシチズンは1995年にザ・シチズンを発表した。これは電波時計ではなく、単独で年差5秒を標榜したものであった。シンプルで日本のビジネスシーンによく合う外装を持つこのモデルは、グランドセイコーと並んである程度の社会的な地位があり、かつアンダーステートメントな人々に向けた製品となっていた。その後改良されたA660ムーブメントを搭載したモデルになると年差±5秒(他社では特別調整モデルでの保証レベル)、5年の長い電池寿命、そしてパーペチュアルカレンダーを搭載し、日常的な使い勝手という点では最高のものとなった。しかしその一方でデザインが控えめにすぎるところもあり、存在感という点では他社の製品にいま一歩及ばない点もあった。

ザ・シチズン

創立65周年として発売された、ザ・シチズン
会社創立65周年を機に発売された、シチズンのフラッグシップモデル。業界初の10年保証に加えて、顧客登録制度を採用し、徹底したアフターサービスを盛り込んだ。Cal. 0350。年差±5秒以内。


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