モリッツ・グロスマン ブランドを創りだす工房のマイスター

時計特集

三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
鈴木裕之:取材・文 Text by Hiroyuki Suzuki

CEO Interview

ベヌー発表からの約10年間でモリッツ・グロスマンはどう変わったのか?

モリッツ・グロスマン CEO

Christine Hutter クリスティーネ・フッター
クリスティーネ・フッター

ヴェンペの時計師としてキャリアをスタート。VEB(東独の人民公社)の解体後、モリッツ・グロスマンの商標権保護を目指して親族と交渉を重ね、2008年に同社を起ち上げる。

 2010年9月に完成したベヌーのプロトタイプから、新生モリッツ・グロスマンの歴史は始まった。それから約10年を経て、同社はコレクションラインの統合を図っている。その概要は、既存のラインナップを「ベヌー」と「テフヌート」の2ラインに集約。第2世代ムーブメントを搭載するアトゥムの登場以降、その名が消えていたベヌーラインの復活は正直嬉しい。旧アトゥム系やデイト、GMT、バックページ、トゥールビヨンなどすべて、ベヌーラインのコンテンポラリーモデルという位置付けだ。こうしたコレクションの再統合は、この10年で飛躍的に増えたリファレンス整理が目的である。「モリッツ・グロスマンはヨーロッパの他、北米、中東、そして日本で展開していますが、市場によって顧客の好みは大きく異なります。我々はそれほど大きな生産キャパシティを持つわけではないので、マーケットごとの別注品や、顧客からの特注品も多い。また設計者が3人に増えたので、開発スピードも上がりましたね」

 同社の年産数は約400本。将来的には800〜1000本を上限とする増産計画もあるようだが、現状ではそれほどの年産数は達成していない。つまり約10年での変化という点では、より多品種少量生産の傾向が強まったと言える。「我々は何より、手仕事による高いクォリティを保つことを大切にしていますので、急激に生産数を増やすことはできません。しかし2年前と比べても、人員は着実に増えています。新しい時計師は、まず仕上げ部門で6〜8カ月のトレーニングを受けてから、組み立てを受け持ちます。これは仕上げに要する手間と時間を理解していない時計師が多いため。また全員が仕上げのスキルを持っていれば、何かあった際にも部門を跨がずにリカバリーすることができます。モリッツ・グロスマンには、専任の時計師はひとりもいません。全員があらゆる仕事をできるよう、技術の共有を目指しています」

 元時計師でもあるクリスティーネ・フッターは、社員からの発案にも耳を傾ける。例えばツイストは開発部門ではないスタッフの発案、GMTはエンドカスタマーのアイデアがベースだ。「今回は既存コレクションを2本の柱に集約しましたが、将来的には3本柱にする予定です。3本目の柱は、従来とは全く趣きの異なるものですが、典型的なモリッツ・グロスマンだと感じていただける仕上がりになるはず。2〜3年のうちには、ご覧に入れることができるでしょう」

工房のキーパーソン

開発部門

Jörn Heise イェルン・ハイゼ
[開発部門/主任設計士]

イェルン・ハイゼ

グラスヒュッテ・オリジナルでムーブメント開発を手掛けた後、2017年からモリッツ・グロスマンの2代目設計主任に。「小さな企業の分、チームや社内での意思疎通が近いことが美点です」。
Peter Mattes ペーター・マテス
[開発部門/設計士、マイスター時計師]

ペーター・マテス

ETAなどを中心に、スイス時計産業で経験を重ねた設計エンジニア。「スイス時計産業はとにかく大規模。対してグラスヒュッテは小規模だが密度が濃い。ここには創造的な自由があります」。
Mike von der Burg マイク・フォンデアブルグ
[開発部門/設計士]

マイク・フォンデアブルグ

大学卒業後に入社。初代設計主任を務めたイェンス・シュナイダー最後の弟子。「工業化の時代にこんな手仕事の工房があることが素晴らしい。設計者にとってこれ以上の挑戦はありません」。

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