普段使いが可能な複雑時計、ヴァシュロン・コンスタンタン/オーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー

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2018年に発表されたオーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダーは、傑作中の傑作自動巻きに、使えるパッケージングを盛り込んだスポーティーモデルである。このモデルの魅力を、搭載するムーブメントを含めてひもときたい。

オーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー

 ヴァシュロン・コンスタンタンのCal.1120 QPと言えば、第一級の永久カレンダームーブメントだ。ベースとなったのは、薄型自動巻きのCal.1120。1967年に発表された、ジャガー・ルクルト製キャリバー920の改良版である。その上に、48ヵ月表示付きのモジュールを重ねて、永久カレンダーとしたのが本作である。初出は1980年代半ば。

 以降、様々なメーカーが永久カレンダーを発表するようになったが、なぜこのムーブメントが第一級と称され続けるのか。理由は、設計が手堅く、極めて薄いためだ。傑作1120に、薄いモジュールを重ねた結果、Cal.1120 QPの厚みはわずか4.05mmしかない。にもかかわらず、懐中時計用の機構を踏襲し、腕時計用に改良を加えた本作の永久カレンダーモジュールは、無類の信頼性を誇った。

Cal.1120 QP

名機Cal.1120QPの文字盤側。カムとレバーで制御される、古典的な永久カレンダーの作りをそのまま踏襲している。面白いのは、12時位置に見えるカレンダーを制御するための歯車。腕時計用では12ヵ月が標準的だが、本作では、古典的な懐中時計に同じく、48ヵ月表示を採用する。ジュネーブシールを採用するため、歯車などを規制するバネには、線バネではなく、本式の削り出したバネが用いられている。非常に凝ったムーンディスクは、1980年代から続くヴァシュロン・コンスタンタンのアイコンである。
Cal.1120 QP

永久カレンダーモジュールを駆動するのは、傑作中の傑作であるCal.1120である。初出は1967年。ジャガー・ルクルトは新しく設計したCal.920を、パテック フィリップ、オーデマ ピゲ、そしてヴァシュロン・コンスタンタンの3者に提供した。基本設計は新しくないが、今なお薄型自動巻きの最高傑作である。加えて最新版はフリースプラングテンプに変更された。パワーリザーブは短いが、1120の場合、それさえも味である。自動巻き機構にはスイッチングロッカーを採用する。

 この永久カレンダーは、非常に優れていたが、基本設計が古い故の“弱点”があった。1985年のIWC「ダ・ヴィンチ」以降、多くの永久カレンダーや年次カレンダーは、リュウズの操作だけでカレンダーを早送りできるようになった。一方、それより前の世代に当たるCal.1120 QPは、ケースサイドのプッシュボタンを押して、それぞれの表示を早送りする必要がある。

 もっとも、ヴァシュロン・コンスタンタンが重視したのは、リュウズで早送りすることよりも、耐久性の高い昔の永久カレンダーを忠実に再現することと(懐中時計よろしく、月表示は12ヵ月ではなく48ヵ月である)、それ以上に、永久カレンダーモジュールを薄く作ることだった。と、考えれば、プッシュボタンによる早送りは、弱点というよりも、本作の個性と言うべきだろう。

 ただし防水性を考えると、プッシュボタンによる早送りではなく、リュウズによる早送りの方が望ましい。ヴァシュロン・コンスタンタンの永久カレンダーが、高い防水性が求められないドレスウォッチのみに搭載されてきた理由である。

薄いムーブメントを搭載するオーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダーは、ケース厚が8.1mmしかない。そのため、袖口に決して引っかからない。右に見えるのは、女性用の「オーヴァーシーズ・オートマティック」。このモデルも厚さ10.80mmとかなり薄いが、驚くべきことに、パーペチュアルカレンダーのほうがより薄い。

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