【インタビュー】HYT CEO「グレゴリー・ドゥード」

時計特集

三田村優:写真 Photograph by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

ニッチなブランドに異例の成功をもたらした要因

 現在の時計ブランドの中で、最もニッチなプロダクトを作っているのは、おそらくHYTだろう。極めて高価な上、ユニークな時間表示を持つため、MB&Fやグルーベル フォルセイ以上に万人向けではない。しかし、液体で時を示すという発想は面白いが長続きしない、という関係者の予想を裏切り、時計愛好家たちはHYTを熱狂的に受け入れたのである。そんなニッチブランドを巧みに率いてきたのが、グレゴリー・ドゥードである。

グレゴリー・ドゥード

グレゴリー・ドゥード
1972年、フランス生まれ。パリ第6大学などを卒業後、MBAを取得。カルティエ、スウォッチ グループなどを経て、スタートアップ企業を設立。2013年、HYTの液体などを製造するプレシフレックス社のCEOに就任。16年にはヴィンセント・ペリアードの後継としてHYTのCEOに就任した。現在、HYTの従業員は43人。うち20人がR&D(研究開発)部門に所属するというから、生半可な研究機関以上に“尖った”会社である。

「創業5周年を迎えた2017年、弊社はナンバーを戻して、あえてH0を出しました。いったんリセットするという意味を込めて、ゼロですね。そして今年、新生HYTとして、まったく新しいモデルをリリースしました。それがH5です」

 液体で時間を示すのは既存のモデルに同じ。しかし、キャピラリーを動かすためのレバーとカムは極めて大きくなった。液体を送り出すキャピラリーのメカニズムを、H5ではさらに進化させたわけだ。

「今回のモデルでは、HYTの特徴である3Dと流れるようなデザインを強調しました。ムーブメントも、波に洗われて浸食したように改めました」

 HYTが成功を収めた理由は、ユニークな機構だけではない。どの製品を見ても、新興メーカーやニッチメーカーにありがちな〝粗さ〞がまったくないのである。

「私たちは投資を続けることで、部品の内製化を進めてきました。例えば、液体を送るキャピラリー。かつてはサプライヤーに頼っていましたが、現在は内製に切り替えました」。彼は続ける。

「時間を示す液体をキャピラリーで送り込む。信頼性を疑う人もいますが、HYTの時計は、クロノフィアブルの厳格なテストをパスしています。ですから、信頼性は問題ありませんね」

 加えて同社は、今なお、超一流のパートナーと製品開発を続けている。ドゥードは包み隠さず話してくれた。

「私たちは今まで、オーデマ ピゲ・ルノーエ パピやクロノードをパートナーに選んできましたが、H5に関わったのはテックグループです」。名前こそ知られていないが、同社はマニュファクチュール・ロワイヤルの兄弟会社で、ルイ・モネなどの複雑時計の製造にも携わっている。H5の出来が良いのも、当然と言えば当然だろう。

 ニッチなメーカーとしては例外的な成功を収めたHYT。しかし、ドゥードはまだまだ満足していない。

「私たちは、HYTをさらに広げる攻撃的なプランを用意しています。ニッチに留まるつもりはありません」

HYT スーンナウ ドロップワン
ニューヨークで発表された、限定5本のスペシャルモデル。左目はSOONとNOWを記した秒ディスク、右目はパワーリザーブ表示である。文字盤には313本の18Kイエローゴールド製のピンと937個の穴が開けられている。手巻き。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SS(直径48.8mm、厚さ20.08mm)。50m防水。世界限定5本。1136万円。


Contact info: HYT JAPAN/オールージュ ☎03-6452-8802

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