2019 スウォッチ グループ 最前線

時計特集

耐磁性能を高めるために、オメガはCal.1861の15部品を非磁性のものに替えた。主な部品は、ヒゲゼンマイ、天真、アンクル真、耐震装置のニヴァショック、コーアクシャルの軸と歯車および中間車、そして12時間積算計、30分積算計、クロノグラフ車の軸とハートカムなど。また、コーアクシャルも簡略版の2層ではなく、本式の3層コーアクシャルが載っている。プロダクトマネージャーのキスリング曰く「この改良により1万5000ガウスの磁気下でもクロノグラフを使えるようになった」。

新技術・新機構クローズアップ

ここ数年のバーゼルワールドで、一段と気を吐いていたスウォッチ グループ。その旺盛な開発力は、今年のTIME TO MOVEも同じだった。読者の中でも話題になったCal.3861に加えて、注目すべきムーブメントと外装技術のいくつかを詳説したい。

広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

Cal.3861

オメガ Cal.3861

オメガ Cal.3861
名機Cal.861に1万5000ガウスの耐磁性能を与えたムーブメント。脱進機はスイスレバーからコーアクシャルに変更されたほか、ヒゲゼンマイがシリコンに、テンプも緩急針を省いたフリースプラングとなった。精度は日差0秒~+5秒。驚くべきムーブメント。手巻き。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。

 スウォッチ グループ、リシュモン グループ、LVMHグループ。この3大グループの中で、最も開発力があるのはスウォッチ グループだろう。まずハイエンドのブランドで試験的に新しい試みを導入し、量産に成功した後、普及品に技術を転用する。こういった手法は、他グループの追随を許さない。

 今年のタイム・トゥ・ムーブでは、そんな新製品と技術の数々を見ることができた。まずは、オメガの導入したキャリバー3861から。ベースとなったのは、1968年に完成したキャリバー861と、その後継機にあたる1861である。これは、おそらくカム式のクロノグラフとしては世界で初めてブレーキレバーを備えたキャリバーである。以降、カム式のクロノグラフは例外なくブレーキレバーを備えるようになり、コラムホイール式との機能面での差はなくなった。今年、オメガはこの傑作ムーブメントのマスター クロノメーター化に取り組んだ。開発を担当したグレゴリー・キスリングはこう説明する。
「ムーブメント部品の大半は結局交換した。そのうち、耐磁性能を高めるためだけに替えたのは15パーツだ。また精度も改善した。既存のムーブメントは日差がマイナス1秒〜プラス11秒。対して新しい3861は0秒〜プラス5秒以内だ」。テンワの慣性モーメントは24㎎・㎠。ロービートとはいえ、現行量産機としては最大級のひとつだろう。

 併せてパワーリザーブも延長された。「香箱真を細くすることで、長いゼンマイを詰められるようになった。クロノグラフ作動時でもパワーリザーブは約50時間、非作動時は60時間以上ある」という。CEOのレイナルド・アッシェリマンは、まだ量産化へのハードルは高いと説明したが、今後の量産化が待ち遠しい。

ムーブメント

Cal.58-05

グラスヒュッテ・オリジナル Cal.58-05
秒停止機構、ゼロリセット、ミニッツデテントを備えた、世界初のフライングトゥールビヨン。時刻合わせの際はリュウズを引き出すと、垂直クラッチが作動し、キャリッジとテンプがロックされる。さらにリュウズを引くと、秒針が時計方向にゼロ位置まで進み、分針も次のインデックスちょうどまで進む。キャリッジを帰零させるのは「回転ダンパー」。おそらくは別の動力源と、ガバナーを備えているはずだ。手巻き。85石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。

 見るべきムーブメントは他にもある。「セネタ・クロノメーター・トゥールビヨン」のキャリバー58-05は、リュウズを引くとキャリッジ全体がゼロリセットするムーブメント。A.ランゲ&ゾーネの「1815 トゥールビヨン」はリュウズを引くと秒針だけリセットするが、こちらは別動力がキャリッジを回転させ、秒針とともに帰零する。特許申請中に付き詳細は明かせないとのことだが、グラスヒュッテ・オリジナルらしいメカニズムだ。ちなみにこのムーブメントは、分針と秒針の位置を完全にシンクロできる。

 ジャケ・ドローのキャリバー2653A2は、四季と生命の流れを4分間オートマトンで示す大作。4つの蓮を描いた回転ディスクには鯉が取り付けられ、その軸が波状のガイドに当たることで、鯉が尾びれを振る。また、回転する蓮の中心にはブルーサファイア、イエローサファイア、そしてレッドルビーが取り付けられており、これ自体も回転する。外部サプライヤーの手を借りたと思いきや、ブランパンとの共同開発とのこと。

ブレゲ クラシック トゥールビヨン エクストラフラット スケルトン

ブレゲ クラシック トゥールビヨン エクストラフラット スケルトン
今やブレゲの基幹トゥールビヨンキャリバーとなった581。これをスケルトン化したのが本作である。全面に面取りが施されるほか、受けの一部にはマイクロギヨシェが施される。地板と受けは18Kゴールド製。ブレゲ曰く、「採用はマリー・アントワネット以来初」とのこと。自動巻き。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。
Cal.Jaquet Droz 2653 AT2

ジャケ・ドロー Cal.Jaquet Droz 2653 AT2
ブランパンと共同開発した4分間オートマトン。写真は蓮の中心に固定される貴石。文字盤と2枚の葉の下を蓮がくぐり抜けるたびに、石はブルーサファイア、イエローサファイア、そしてレッドルビーと変わっていく。なお、ディスク自体はかなり重いが耐衝撃装置を備えている。56石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。

外装

 外装で見るべきは大きくふたつ。「シーマスター プラネットオーシャン」は、ベゼルにオレンジセラミックスを採用した。セラミックスでこういった色を出すのは不可能とされてきたが、オメガは実に鮮やかな色味を与えた。また、ブランパン「フィフティ ファゾムス」が採用したチタンケースは、地味ながらもかなり良質だ。「バチスカーフ」のチタンケースは角の処理などが今一歩だったが、本作は他社の優れたチタンケースに比肩する。

ブランパン フィフティ ファゾムス
フィフティ ファゾムス
オメガ シーマスター プラネットオーシャン
シーマスター プラネットオーシャン
各社が取り組む、鮮やかな色味を持つセラミックス。カラーセラミックスで他社をリードするのはウブロだが、ひょっとしてオメガはそれを超えるだけの実力を持っているかもしれない。2019 年の「シーマスター プラネット オーシャン」は、かつてないオレンジ色のセラミックベゼルを備えたモデルだ。オメガがセラミックスに注力していることは知っていたが、オレンジを出すとは思ってもみなかった。これは焼成したホワイトセラミックスに、ある素材を加えてオレンジに変色させたもの。詳細は特許申請中に付き明かせないとのことだが、もちろん顔料を加えてこの色にしたわけではない。一方、ブランパンの「フィフティ ファゾムス」に加わったチタンケースは、長らくチタンケースを不得手としてきたスウォッチ グループとして例外的によく出来ている。今年、ブレゲが「マリーン」に優れたチタンケースを採用したことを考えると、今後スウォッチ グループの時計にもチタンの採用例が増えるに違いない。

Recommend おすすめ記事

News ニュース