クロノス日本版、2019年の腕時計トレンドを振り返る(前編)

時計特集

バーゼルワールドの縮小、米中対立、香港のデモと言った外的要因が影を落とす時計市場。そういう中で、2019年のトレンドはどういう様相を見せたのか。本誌編集長の広田雅将が2019年のトレンドを総括する。ただし、本人の希望により、記事ではなく雑談形式だ。本人曰く、話のほうが脱線できるため、とのこと。

広田雅将(本誌):コメント Comment by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

2019年はスポーティーウォッチが大ブーム

何が時計のトレンドで目立ちましたか?

10年前との大きな違いが、スポーティーウォッチの大ブームでしょうねえ。5年前でさえも、こうなるとは思わなかったですよ。僕らを含めて、トレンドを予想した時計関係者は全員懺悔ですよ。それはさておき、ファッションがストリートに接近するのと同じく、時計の世界も、よりカジュアルな方向に向かっていると言えそうですよね。どこまで続くかは分かりませんけど。

スポーティーウォッチのブームって続くんですかね?

今や、このジャンルは時計業界のスタンダードとなり、猫も杓子も加わろうとしている。モーリス・ラクロアCEOのステファン・ワザーさんにこの間会ったんですよ、彼は「スポーツウォッチ(含むスポーティーウォッチ)のブームはしばらく続くだろう。他のメーカーも追随しようとしている。ただ、過去の遺産がないメーカーはつらいかな」と話しておられましたね。ちなみにラクロアの作った「アイコン」はいい時計ですね。よくまとまってて、今のスポーティーウォッチっぽい。

アイコン

モーリス・ラクロア「アイコン」

スポーティーウォッチとスポーツウォッチの違いって何なんですか?正直分からないんですけども。

僕も十分には定義できてません(笑)ただ、スポーツウォッチほどの性能はないけど、比較的高い防水性能や耐衝撃性を持つのがスポーティーウォッチと言えそうですね。あと、今のスポーティーウォッチは薄いですね。それこそドレスウォッチ並みに。あと最近のスポーティーウォッチは、良くできたブレスレットを備えていて、ドレスウォッチ並みにベゼルを細くしたものもありますね。

それって、いわゆる「ラグスポ」と変わらないんじゃないですか?

確かに1972年の「ロイヤル オーク」や76年の「ノーチラス」に近いですね。ただこれらは、どっちかというと、ドレスウォッチの防水性を高めたって感じですよね。一方のスポーティーウォッチは、過剰になってしまったスポーツウォッチから、マッチョさを消した感じ。ケース厚くしなくても、今だったら防水性能を高められるじゃないですか。それで、ドレスウォッチ並みにぺたぺただけど、ラフに使える時計ができてきた。

いろいろあるけど、何がスポーティーウォッチの代表作なんですか?

ヴァシュロン・コンスタンタンの「オーヴァーシーズ」(2016年発表)や、ブレゲの「マリーン」(2018年発表)、シャネルの「J12」(2019年3月発表)なんかが、スポーティーウォッチらしい時計じゃないですかね。どれもいい時計だけど、個人的な推しは新しいJ12ですね。軽くて着けやすいし、バックルが張り出していないのでデスクワークにも向く。ちょっと厚いんですけど、時計が軽いから気にならないですね。ムーブメントはフリースプラングテンプ付きに変わったし。売れて数が足りなかったみたいですけど、そろそろ店に並んでるんじゃないかな?

それと、あとで言いますけど、ブレゲのマリーンに加わったチタンブレスは秀逸ですね。意外な伏兵でした。なおオーヴァーシーズは熟成されて、いい時計になったと思いますよ。もともと素性は良かったので、細かい点を見直した結果、マルチパーパスウォッチになった。

マリーン クロノグラフ

ブレゲ「マリーン クロノグラフ」


見るべきは「オデュッセウス」と「アルパインイーグル」

今年、このジャンルで目を惹いたのは、A.ランゲ&ゾーネの「オデュッセウス」(2019年11月発表)と、ショパールの「アルパインイーグル」(2019年11月発表)かなあ。あと、モーリス・ラクロアも大ヒット作、アイコンのコレクションを拡充したのと、マリーンに加わったブレスレットモデルは、かなりいいですよ。全部バラバラにできるから、メンテナンスできるんですよね。あと左右の遊びが結構いい。

オデュッセウスとアルパインイーグルはどうですか?クロノス読者でも結構注文した人多いですけど。

オデュッセウス

A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」

オデュッセウスはプロトタイプを見せられたんですよ。どう思うかってことで。そのまま製品にしたらいいと思いますと答えましたね。あのブレスレットはIWCのパイロットウォッチのそれに似ていて、簡単に長さが調整できるんですよね。それバックルとバックルには微調整機能が付いていて使いやすい。

A.ランゲ&ゾーネの社長であるヴィルヘルム・シュミットさんに、IWCからノウハウもらったのかと聞いたんですよ。彼曰く、違うんだと。バックルはIWCと同じだが、IWCからノウハウはもらっていないとのことでした。このブレスレットはいいですね。ただ「ノーチラス」の5711や5712みたいにウネウネしてるわけじゃないですよ。ちょっとドイツっぽい。

ただ遊びはロイヤル オークよりも取ってますね。ドイツ人はブレスレットで毛を挟むの嫌いですからね。余談ですけど、ノーチのブレスはどうってことのない作りだけど、あのうねうね感はちょっと真似できない。時計としての「格」を考えたらビス留めにすべきだけど、たぶんビスに代えたら固くなっちゃうでしょうね。

Cal.155L

Cal.155L DATOMATIC

あとこの時計は、振動数を2万8800/時に上げたので、精度は出ると思います。それと、日付と曜日表示は早送りできるのに、逆戻しできるんですよね。このサイズのカレンダーで、ぐるぐる逆戻しできるのって他にないんじゃないかな?これだけで、オデュッセウスは買いだと思いますよ。ウェイティングリストは長いけど、とりあえず買っておけと。

「アルパインイーグル」はどうでしょう?

アルパインイーグル

ショパール「アルパインイーグル」

これも製品版の前に、プロトを触りました。ブレスレットはかなり凝っていて、それぞれのコマは、ネジでもCリングでもない、専用のリンクでつないでいるんですよね。ただプロトタイプのブレスレットはエッジを取り切れていなかったんです。ちょいと硬かった。ただショパールのことだから、製品版までには詰めてくるだろうと持ったので、記事には書きませんでしたよ。この間製品版をかなり触ったけど、さすがに良くなっていた。ショパールはちゃんと詰めてくる会社ですね。

「アルパインイーグル」、L.U.Cを載せたら良かったという意見もありましたが?

Cal.Chopard 01.01-C

ショパール「Cal.Chopard 01.01-C」

L.U.Cのマイクロローター、しかもジュネーブシール付きとかカリテフルリエを載せたら、ロイヤル オークみたいな時計になったかもしれない。ただ僕はあのマイクロローターが好きだから言うけども、繊細だからスポーティーモデルには向かないですよ。新しいスイッチングロッカー付きの96系ならいけるかもしれないけど、やっぱり繊細かな。だから頑強なフルリエエボーシュの改良版で良かったんじゃないですか。それに、男性用、女性用ともよく巻き上がるし、テンプがでかいから理論上は携帯精度も高いし。個人的にはマイクロローター載せなかったのは英断だと思いますね。

ラクロアの「アイコン」はどうですか?

モーリス・ラクロアのアイコンは、今のスポーティーウォッチに求められる要素をすべて盛り込んだ時計ですよね。売れるのは納得です。ムーブメントは汎用のセリタですけど、今のセリタは良くなったので普通に使えます。むかしはグダグダでしたけどね。それと外装の出来はかなりいいですね。とりわけブレスレットは、左右の適度な遊びと、剛性感を両立させてます。正直、この値段でできるとは思わなかった。また、100m防水とは思えないほどケースが薄いのもいいですよね。ラクロアはケースの内製を止めちゃったけど、でも相変わらずケースの出来はいい。

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