自分の時計はエコ?未来を見据え、社会貢献活動に取り組むブランドの努力(前編)

時計特集

環境問題や持続可能な生産システムの構築が話題となる現在。時計業界は倫理的にも環境保全への責任を果しているのだろうか?今回は2019年10月から行われている興味深い取り組みを紹介する。

Originally published on watchtime.com
Text by Maria-Bettina Eich
Edit by Tsuyoshi Hasegawa

2019年のSIHHにおいて来場者を驚かせた一本がこちら。H.モーザーはリアルな植物をあしらった時計を打ち出し、時計業界をも取り巻く深刻な状況を広く世界に問いかけた。

 最初に良いニュースをひとつ。ハイクオリティな機械式時計を購入するということは、それ自体がサスティナビリティ=持続性のある商品を購入したこととなる。伝統的な時計作りにおいて、持続性こそは大きな美点と言える特質だ。一定のクオリティを持つ本格時計は、短時間に消費されるものではなく、数世代に渡る使用が期待できるアイテムだからだ。このことは「パテック フィリップは現在所有するものではなく、次世代へ受け継がれるもの」という、同社の印象的なスローガンによっても伝えられている。見方によっては、これが賢いマーケティングの鍵であることに気づかされるはず。著名なオークションハウスのカタログを一瞥すれば、ハイクオリティな本格時計がいかに長寿命であるかを理解することとなる。また、誰の周りにも祖父や父親、親類などから受け継いだ、見事に機能する機械式時計を誇らしげに語る人がいるはずだ。

 しかしすべての機械式時計が文字どおり“エコロジカル”だと言えるだろうか?そうならば問題はないが、ゴールドの採掘現場における労働環境や人的搾取のことを考えると、黄金の輝きを手放しで称賛することはできない。また、毎日の製造工程から発生する環境的影響も、時計業界が考えるべき事柄だ。時計作りに携わる企業はこれらの、そしてその類似事例に至るまで広く責任を持つ必要がある。ひとつ確かなことは、公正かつ環境に優しい製品作りが広まれば、消費者はより高い基準のアイテムを手に入れることが可能だ。そしてこの基準は、ラグジュアリー業界においては一層高いものが求められるべきである。結局のところ、ハイクオリティな時計に代表されるラグジュアリーアイテムは、生活必需品とは言いがたい。しかしだからこそ、生活に豊かな楽しみを与えてくれる特別なものとも言うことができる。そして現代の消費者は、自分の消費行動によって他の人々や環境、そして未来に続く世代にダメージを与えたくないと考え始めているのだ。

RJC:持続可能な基準

スイス・シャフハウゼンに建設されたIWCの新ファクトリーでは、100%リサイクル可能な電気エネルギーが使用されている。

 サスティナビリティ=持続性に関する努力は、学生たちが地球の未来に向けて、街頭などで声を上げる前から時計業界に存在していた。Responsible Jewellery Council(RJC)は、2005年に創立した機関であり、その目的はジュエリーのサプライチェーンに関し責任ある基準を設けることである。その範囲は新しい原料の採用に始まり、製品作りの工程、そして販売店の店先に並ぶまでをカバーする。公正な作業条件やその他の倫理的側面が、これらの環境的責任行動基準の一部となっている。多くのブランドが近年、RJCの認定取得にこぞって動き出しているのだ。IWCやA.ランゲ&ゾーネ、カルティエなどは、RJCの“実務基準”を満たしたビッグネームの一部に過ぎない。スウォッチグループにおけるゴールドの鋳造は、RJCによって認定されたものであり、同社のゴールドの消費全体について、倫理的条件を常にモニタリングしているのである。

 RJCの認定に関しては、持続可能な企業を増やす意味で確実に良い基盤となっている。しかしゴールドにおける環境的・社会的に許容できる条件下での採掘については、まだ多くの課題を残している。ただしショパールは、これを実現させた企業として広く知られる存在だ。2013年にショパールが「サステナブル・ラグジュアリーへの旅」と銘打ったコレクションを展開して以来、数年に渡りジュエリー・ウォッチ分野でのパイオニアとなっている。Eco-Ageとパートナーを組み、ゴールドと宝石の採掘に関して、そこで働く人々に対し倫理的に公正かつ環境にも責任を持つことで、ショパールは多くのイニシアティブを獲得してきている。

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