ブライトリング/クロノマット

アイコニックピースの肖像

広田雅将:取材・文 奥山栄一、三田村優:写真
[連載第3回/クロノス日本版 2011年3月号初出]

1942年に世界初の回転計算尺付きクロノグラフとしてリリースされた「クロノマット」は、42年後の84年に、パイロットのための実用的、かつファッショナブルな自動巻きクロノグラフをコンセプトに復活を遂げた。
以降、“新生クロノマット”は改良が重ねられ、ついには同社初となる自社製クロノグラフ、Cal.01を搭載するまでに至る。
機械式時計復興期の80年代から今日まで、ブライトリングのアイコンであり続けるこの比類なき計器と歴史にスポットを当てよう。

FIRST CHRONOMAT
イタリア市場開拓に向けて完成した「新生」クロノマット

クロノマット ファーストモデル

クロノマット ファーストモデル(1984)
Ref.81950。1983年のプロトタイプを経て、84年に発表された初号機。プロユースらしく、裏ブタには“TESTED 20G”の表記がある。搭載するのはCal.13ではなく、ストックのETA7750。掲載品はほぼオリジナルだが、クロノグラフ針と12時位置のライダータブはおそらく後年のモデルから流用したもの。自動巻き。17石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径39mm)。100m防水。参考商品。

 機械式クロノグラフ復興の立役者が、1984年の「クロノマット」(Ref.81950)である。汎用ムーブメントを個性的な意匠に包む手法は、79年の「ポルシェデザイン・クロノグラフ」に同じだが、イタリア空軍のアクロバットチーム「フレッチェ・トリコローリ」のアドバイスにより、クロノマットはより「具体的な」造形を持っていた。それがフライトジャケットの袖に引っかからないよう直線状にカットされたラグであり、グローブの装着時にも操作しやすい、ライダータブ(あえて交換できるようビス留めとなっていた)付きの回転ベゼルと大ぶりなリュウズ、そしてプッシュボタンであった。また強い衝撃を受けた際の破損を防ぐため、サファイアクリスタル製の風防は、ベゼルトップより少し下げて埋め込まれ耐衝撃性に優れたテフロンリングで固定されている。

 デザイナーは、ブライトリング家から経営権を譲り受けた、社長のアーネスト・シュナイダー。彼は100種類のプロトタイプを作り、最終版をフレッチェ・トリコローリに提供する。加えてシュナイダーは、クロノマットの開発に際して、優れたアドバイザーを得た。後にジラール・ペルゴを率いたルイジ・マカルーソである。イタリアでブライトリングの販売代理店を営んでいた彼は、レザーストラップの種類を増やし、この時計をより「ファッショナブル」にすることを求めた。プロフェッショナルでありながら、ファッショナブルな新しいクロノグラフ。その結果は、驚くべきものであった。まずイタリア市場で熱狂的な支持を集めたクロノマットは、以降、四半世紀以上にわたって、機械式クロノグラフのアイコンたる地位を得ることとなり、そして数多くのメーカーがクロノグラフの製造に参入するようになったのである。

(左上)時代を感じさせる文字盤。四角いフォントやツヤを落とした黒は、同年代のクロノグラフに共通する。一部に墨入れされたベゼルはRef.13050までの特徴。「ジェンタ風」の針にも注目。
(右上)立体的な文字盤の見返し部。斜めから見ても間延び感を与えない、優れたアイデアである。上段はタキメーター、内側はデシマルメーター。
(中)ケースサイド。直線状のラグは、フライトジャケットの袖に引っかからないための配慮である。
(左下)一方向回転ベゼルと、15分ごとに付けられたライダータブ。ライダータブを固定するネジが、ベゼル固定ネジの役目も兼ねている。
(中下)ルーロ-・ブレスレットとそのバックル。現在のモデルに比較してかなり簡潔である。
(右下)「エルゴノミック」なケースサイドと裏蓋。やはり袖口に引っかけないための造形である。1999年のRef.13350まで、裏ブタはラウンド状であった。

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