ショパール/L.U.C Part.2

アイコニックピースの肖像

Hand Wound

L.U.C Cal.06.01-L[L.U.C EHG]
現行品最良の手巻きムーブメントのひとつ。設計はショパールとジュネーブ時計学校による。地板と受けは洋銀製、穴石は立体的なミ・グラスと、品質は極めて高い。手巻き(直径43.2mm、厚さ5.5mm)。20石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。

L.U.C Cal.98.01-L[L.U.C 1.98]
2000年初出。4つの香箱で約9日間のパワーリザーブを実現した手巻きムーブメント。またストップセコンドと改良された日付表示も加わった。仕上げはL.U.C 1.96に準じる。手巻き(直径28.6mm、厚さ3.7mm)。39石。2万8800振動/時。巻き上げヒゲ。


 1.96の低い生産性は、愛好家には歓迎すべきものであっただろうが、製品版の試作段階でたちまち問題となった。すべての部品を磨き上げ、しかも一日に数本しか製造できない巻き上げヒゲを載せていたら、製造個数は増やせない。そこで加わったのが、真の量産型とも言うべき3.96(現96.03-L)である。発表は1.96と同じ96年。ヒゲゼンマイは平ヒゲに、ローターはタングステン製(現在は22K製)に変更されたが、緩急針は微調整が可能で、耐衝撃性の高いトリオビスに置き換わった。面取りもダイヤカットになったが、それ以外の仕上げは1.96のレベルを維持した。実のところ、生産性はあまり変わらなかった、と関係者が漏らしたはずである。

 1.96の派生系としてより興味深いのが、4つの香箱を持つ1.98(現98.01-L)だ。アイデアを出したのはショイフレ氏。〝セイリングボートの艪〟にインスピレーションを受けた彼は、マイクロローターを外してそこに香箱を追加し、4つのゼンマイでパワーリザーブを延ばそうと考えた。すでに1.96の開発段階で、長い駆動時間は愛好家に歓迎されると喝破していたショイフレ氏。1.98とは、そんな彼の哲学を体現した時計であった。

 マイクロローターを外せば、確かに香箱のスペースを捻出できる。ただ設計は容易でなかった。香箱を増やした結果地板も拡大し、別物として作らねばならなくなったのである。もっとも4つの香箱は、長期間にわたって、高い振り角を維持することを可能にした。

 1.96に始まった〝超高級機を作る〟という思想。その極北が、2010年発表のLUC EHGだろう。きっかけは、ショイフレ氏が、ジュネーブ時計学校の教材が不足しているという情報を得たことだった。教材のユニタスが足りないことを聞いた彼は、ショパールの技術陣に、ジュネーブ時計学校の教授たちと共同で代替品を設計するよう指示を出した。それが極めて古典的な手巻きムーブメント、LUC EHGとして完成したのである。地板と受けは洋銀製、ヒゲ持ちは可動式、そして香箱の軸受けにベリリウム合金を採用したこのムーブメントは、ユニタス代替機の水準を大きく超えていた

L.U.C Cal.98.05-L[L.U.C 4R]
L.U.C 1.98のレギュレーター版。日付表示がデイトリング式に改められたほか、24時間表示を備える。かつてL.U.C 1.98の拡張は考えていない、とショパールは述べたが、基礎体力の高さはモディファイにこそ向く。基本スペックと仕上げはL.U.C 1.98に同じ。。

 超高級機に傾倒する一方で、ショパールは実用性と汎用性も考えるようになっていく。その先駆けとなったのが、2006年初出の自動巻きクロノグラフ、LUC10/11CF(03.03-L)である。1.96に始まるLUCは、基本的に古典的な設計を踏襲していた。対して新しいクロノグラフは、垂直クラッチを持つ、モダンな設計を採り入れている。手がけたのは、やはり超一流のクロノグラフに携わったチームである。彼らはこのムーブメントを、現行品の最良にしようと考えたのだ。

 一例が一体成形されたリセットハンマーだろう。このクロノグラフは、昔のバルジュー同様、リセットボタンが直接ハンマーを叩くダイレクトリセット方式を採用する。感触は良いし、フライバックを加えるには最適な仕組みだが、直接秒積算計や分積算計の軸を叩くため、機構への負荷が大きい。そこで衝撃を吸収するべく、リセットハンマーの先端にはショックでたわむバネがつけられた。またバネのおかげで、長期間使用してもセンタリングのズレを調整する必要がない。ただしリセットハンマー自体が重くなる。そこで設計陣は、リセットハンマーを押さえつける別の受けを設けて、ブレが出ないようにした。

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