ショパール/L.U.C Part.2

アイコニックピースの肖像

Full Rotor Automatic

L.U.C Cal.01.01-L[L.U.C 1.010]
L.U.C 10/11CFからクロノグラフ機構を外した自動巻き。加えてテンプが緩急針付きに変更された。生産性を考慮したとはいうものの、ネジを見れば質の高さは明らかだ。自動巻き(直径28.8mm、厚さ4.95mm)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。

L.U.C Cal.03.03-L[L.U.C 11CF]
2006年初出。垂直クラッチとフライバック機構、そして秒針のゼロリセットを持つ自動巻きクロノグラフ。設計の完成度はL.U.C 1.96に比肩する。自動巻き(直径28.8mm、厚さ7.6mm)。45石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。


 自動巻き機構も一新されている。採用したのは凝ったラチェット式ではなく、量産に向くリバーサー式。しかし爪を内蔵するのではなく、堅いニッケル-リン製の遊星歯車が用いられた。設計に携わったエリック・ブロリス氏は「耐摩耗性に優れるだけでなく、不動作角(ローターが回転しても巻き上げない角度)は8度から12度に抑えられた」と胸を張る。

 緩急針を用いないフリースプラングが採用されたことも特徴だ。テンワにマスロットを入れるのは他社に同じだが、その外周を丸く成形した「ヴァリナーバランス」が採用された。テンワの抵抗要因は、その3分の2が空気抵抗である。それを抑えた結果、このムーブメントの振り角はT0(全巻き時)で約300度、T24でも約260度と向上した。

 長年、超高級な設計にこだわってきたLUC。しかしこのムーブメントでは高い生産性と、高級だが実用に使えるという方向性に転じた。それを証明するかのように、10/11CFのムーブメント厚は7.6㎜もある。かつてのLUCからは考えられない変化だが、このムーブメントが、LUCに新しい道を拓いたことは間違いない。

 この10/11CFをベースに、3針自動巻きとして再設計されたものが1.010である。〝積算機構を取り去っただけ〟ともいえるが、そもそもの素性が良いのだからこれは正解だ。またテンワの直径も拡大された。コストのかかるヴァリナーテンプは、価格を抑えた1.010には向かない。トリオビスに変えたのは正解だが、マスロットがない分だけテンワが軽くなる。重さを揃えるため、ショパールはテンワの直径を拡大し、天真の位置自体も変えたのである。当たり前のように思えるが、普通のメーカーにできる配慮ではない。

 開発初期から最高峰を目指したLUC。超高級を目指す、というキャラクターは変わりつつあるが、その一方で、今や生半可な実用機は足元にも及ばないほどの実用性を持つようになってきている。とはいえ一流好みのショイフレ氏が指揮する限り、LUCの本質が変わることはなさそうだ。今なおすべてのLUCムーブメントは、地板の全面にぬかりなくペルラージュが施されているのだから。


【アイコニックピースの肖像】
ショパール/L.U.C
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