グラスヒュッテ・ オリジナル/セネタ Part.2

アイコニックピースの肖像

GO Cal.12-50 グラスヒュッテ150周年記念モデル
1995年初出。グラスヒュッテ・オリジナルの創業150周年モデルとされている。当時の価格は8450ドイツマルク。ベースとなったのは自動巻きのCal.10-30。ローターを外し、優れた仕上げが施された。限定300本。個人蔵。

GO Cal.10-30
民営化されたGUB GmbHが製造したのが、Cal.10-30である。基本設計はCal.11系にならっているが、仕上げが改善されたほか、機構部品の多くがスイス製に変更された。初出は1993年。個人蔵。

Cal.67.1 Automat
1960年のライプツィヒ見本市で発表された自動巻き。手巻きの70系の上に、プリミティブな自動巻きを載せている。高級機として企画されたため、“Q1”が与えられている。生産数は19万360個。個人蔵。


 65年に発表された「スペシマティック」ことキャリバー74(日付なし)と75(日付あり)は、ようやく当時の世界水準に追いついた新しい自動巻きだった。直径28㎜は既存の67/68に同じだが、厚さが5.05㎜(75は5.55㎜)に減った結果、今風のシャープなデザインを持てるようになったのである。GUBが、海外市場を意識していたことは、当時の広告に明らかだろう。スペシマティックのブローシャには、比較対象として、当時薄型自動巻きとして知られていたエテルナの「エテルナマティック」が挙げられているのだ。

 60年代のGUBウォッチを理解する鍵が、文字盤の造作にある。外貨の流失を防ぐため、60年以降、GUBはできるだけ旧東独国内で時計の部品を製造するようになった。おそらく、1950年代後半に当時の政権が推し進めた、共産化と無縁ではないだろう。しかしこの時代の消費者が好んだ、カラフルな文字盤を作ることは難しかったようだ。それを担ったのが、フォルツハイムの文字盤メーカー、T.H.ミュラー(現グラスヒュッテ・オリジナル)である。同社には、GUB向けに製作した文字盤のサンプルが残されており、それらの多くは鮮やかな色や立体的なインデックスを備えていた。筆者の知る限り、スペシマティック以降のGUB製ウォッチには、西独製の文字盤を持つものが少なくなかったし(後には東独でも製造したらしい)、それが60年代半ばから70年代半ばにかけてGUBの個性となったのである。その名残は、現行モデルの「シックスティーズ」や「セブンティーズ」に見て取れよう。

Cal.11系初のクロノメーターモデルが、Cal.12-50である。ヒゲゼンマイには高性能なニヴァロックス1を採用。地板は未仕上げだが、受けには高級機らしい仕上げが施されている。極めて珍しい個体である。

Cal.11系の最終系にして、Cal.39の原型となったムーブメントである。短期間のみ「スペシマット」という名前が与えられたようだが、普及はしなかったようだ。1997年には、後継機であるCal.39に置き換わった。

GUB Cal.11-27
1979年初出。通称「スペシクロン」。振動数を5Hzから8Hzに向上させた高精度機。日付なしがCal.11-25、日付ありがCal.11-26、曜日付きがCal.11-27となる。Cal.74/75同様、製造年によりローターなどが異なる。個人蔵。


 79年にリリースされたのが、GUB最後の自社製自動巻きとなる「スペシクロン」ことキャリバー11系だった。直径は25.6㎜、2万8800振動/時に加えて、ボールベアリングで保持されるローターを持つこの自動巻きは、同時代のスイス製の自動巻きに比肩するスペックを持っていた。当初のリリース予定は73年だったが、技術不足とクォーツへの注力により計画は延期。5年後には復活したが、その時には、GUBの経営は救いようがないほど悪化していた。キャリバー11は79年にようやく生産開始となったが、その決定はあまりにも遅かった。85年までの総生産数は、スペシマティックの10分の1しかない、約30万個に留まったのである。また、ムーブメントの仕上げも、かつてのGUBとは比較にならないほど悪化していた。

 もっとも、ムーブメントの厚みとプアな仕上げを除けば、キャリバー11系の基本設計は極めて優秀だった。自動巻きは保守的な片巻き上げだったが、巻き上げ効率は決して悪くなかったし、高振動化により精度もスペシマティックに比べて大きく改善された。

 やがてこのキャリバー11は全面的なモディファイを受け、GUBを救うことになる。93年に民営企業となったGUBは、自社製自動巻きの10-30を発表。これはニヴァロックス製の耐震装置やヒゲゼンマイ、主ゼンマイなどの採用で性能を大幅に改善したキャリバー11そのものだった。そしてグラスヒュッテのウォッチメイキング150周年を祝う95年には、仕上げを一新した手巻きのキャリバー12-50をリリース。このふたつから生まれたムーブメント、キャリバー39はグラスヒュッテ・オリジナルの基幹機として、やがて同社の屋台骨を支えることとなる。


【アイコニックピースの肖像】
グラスヒュッテ・ オリジナル/セネタ
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