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パテック フィリップ/アクアノート Part.3

アイコニックピースの肖像

キープコンセプトで進化を遂げた第3世代アクアノート

広田雅将:取材・文 吉江正倫:写真
[連載第52回/クロノス日本版 2019年7月号初出]

Ref.5167

Ref.5167
2007年にリリースされたエクストララージモデル。価格を除けば、現代を代表する万能時計のひとつだ。自動巻き(Cal.324 SC)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRG(10時~4時方向の径40.8mm、厚さ8.1mm)。12気圧防水。388万円。

この10年で、パテック フィリップはケースのクォリティをさらに改善した。それを象徴するのがラグの造形。歪みのなさは、写真が示す通り。また、サテン仕上げも密で、エッジのダレも見られない。

2007年のRef.5167以降、文字盤のパターンは立体感を抑えたものとなった。質感の改善を示すのが、インデックスに施された夜光塗料。歪みなく施されているのが分かる。なお、すべてのアクアノートは、18Kゴールド製のインデックスを備える。

1997年のファーストモデル以降、ケースデザインはほとんど変わっていない。ただし、Ref.5060に比べて、Ref.5167はケースがわずかに薄くなった。ラグを短く切ってあるため、時計の取り回しは良好だ。ただし、ストラップとケースを密着させてあるため、ストラップは旧作ほど曲がらない。

 2007年に発表されたアクアノートの第3世代が、10時〜4時方向の径40.8㎜のケースを持つRef.5167Aである。搭載するのは、最新型自動巻きのキャリバー324 SC。翌年にはブレスレット仕様の5167/1Aを加え、09年にはローズゴールドケースの5167を加えた。トロピカルのバンドと、ベゼルとミドルケースを一体化させたケースは従来に同じだが、近年のパテック フィリップらしく、ディテールはさらに進化した。

 ベゼルとミドルケースを一体化すると、ケースの磨きはどうしても甘くなる。現在、各社がケース構造を細かく分割したがる理由だ。ノーチラスのケースを3ピースに分けたことを考えると、アクアノートでも可能だったに違いない。しかしパテック フィリップは、あえて2ピースケースを貫き、しかし仕上げを多く改善した。面の歪みはいっそう小さくなり、エッジも残るようになった。ラッカーで仕上げたブラウン文字盤も、ラッカーとは思えないほど薄く載っている。

第3世代が搭載するのは、高振動版のCal.324である。フリースプラングにシリンバー製のヒゲゼンマイを備えるこのムーブメントは、短いパワーリザーブと、ストップセコンド機能がないことを除いて、最も理想的な自動巻きのひとつである。

新しく備わった三つ折れのバックル。プレート自体にバネ性を持たせてあるため、バックルが厚くならない。シンプルに見えるが、前作のバックルより出来ははるかに良い。

 装着感は相変わらず優秀だ。サイズが拡大したにもかかわらず、ケース厚が8.1㎜しかないため、アクアノートらしい着け心地は不変だ。また、プレート自体にバネ性を持たせた新しいバックルは、デスクワークを邪魔しないほど薄い。

 筆者はアクアノートを好むが、とりわけ第3世代は魅力的だ。2008年以降採用されたキャリバー324 SCは、シリコンヒゲゼンマイの採用により、いっそう耐磁性と等時性を高めた。つまり、多少ラフに使っても、まったく問題はないはずだ。また、リュウズを回した際のスムーズな感触も特筆に値する。

 ノーチラスの陰に隠れてあまり目立たないアクアノート。しかし、薄くてシンプル、かつ実用に耐えうる現行アクアノートは、独自の魅力を持っている。入手は難しいが、手にする価値のある1本だ。

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