天文表示第2回「ムーンフェイズ機構 Part.2」

時計機構論

菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara


 前回は、18世紀の懐中時計から現在の腕時計にまで搭載されている、古典的でスタンダードなムーンフェイズ機構について概要を紹介した。その基本的な仕組みをおさらいすると以下のようになる。

・朔望月の周期=29.5日(29日12時間)と設定
・ムーンフェイズの回転ディスクの歯数=59
・ディスク回転周期=59日で1周。半周で29.5日を表現

 古典的な機構で大前提となる朔望月の周期では、実際の平均値の29.5日44分2.8秒の44分2.8秒が切り捨てられている。カレンダー機構と同じように1日で1歯進める設計上、そのような簡易な近似値を用いてムーンフェイズの歯車機構を工夫せざるを得なかったわけだが、この44分以下の端数も累積するとばかにならない誤差を生む。

 仮に厳密な精度を求める時計愛好家が、天文暦を参照してムーンフェイズの表示を正確に調整して使い始めたとしても、表示誤差は1年たつと約9時間、2年で約18時間、満3年で約27時間に達するのだから、手前の2年8か月を過ぎるあたりですでに1日の進みに相当する誤差が生じている。この時点で表示を手作業で修正する場合、1日先に送るならともかく、進みすぎた1日を戻すのは面倒だ。実際のユーザーとしては、どこか新月か満月のタイミングで時々リセットすれば良さそうな気がする。

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