鳴り物時計第3回「ミニッツリピーター Part.1」

時計機構論

ハンマーが叩く“鐘”に相当するパーツを円環状のワイヤーゴングに置き換え、ムーブメント外周に配置する方式は、時計師アブラアン-ルイ・ブレゲが1783年に発明。リピーターウォッチの薄型化を実現したブレゲの設計は、当時の懐中時計から現在の腕時計にまで広く一般的に用いられている。
ヤジマオサム:写真
Photographs by Osamu Yajima
菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

 伝統的な機械式時計における複雑機構の最高峰とされるのが、トゥールビヨン、永久カレンダー、ミニッツリピーターである。これにスプリットセコンドクロノグラフを加える場合もあるが、歴史的な時系列で言えば、この中で起源が最も古いのはミニッツリピーターになる。

音で時刻を告げる時計そのものはヨーロッパ中世にまでさかのぼるが、任意の操作によって現在の時刻を音で知らせる「リピーター(Repeater)」は、17世紀後半にイギリスの時計師エドワード・バーローやダニエル・クエアーが発明したとされる。当初は置き時計だったが、18世紀終わりにアブラアン-ルイ・ブレゲが鐘に相当するパーツをリング状のゴングに置き換え、それをムーブメントの外周に配置したことによって、画期的な薄型の懐中時計リピーターが誕生する。ブレゲが発明した方式は、現在までリピーターウォッチの基本になっている。

 リピーターは、利用者が時刻を知りたいときにレバーやボタンを押せば、時計に組み込まれたハンマーが鐘を叩き、そのチャイム音の回数で時刻が分かるのだが、この種の時計は、照明の未発達な時代に、夜間や暗闇でも時刻が確認できるように考え出されたのがそもそもの始まり。照明が行きわたる近代以降は必要不可欠なものではなくなったと言えるが、それでも高度な複雑機構と貴重な技術は19世紀の懐中時計や20世紀の腕時計のごく一部に受け継がれ、消滅せずに残った。そして、1990年代以降の機械式時計復活の流れに乗って再び脚光を浴びるようになり、時計愛好家の間で垂涎の的になっている。

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