【81点】ロジェ・デュブイ / モネガスク クロノグラフ

スペックテスト

シンプルなエレガンス。2011年発表の「モネガスク クロノグラフ」だが、2012年にはホワイトダイアルの新作がローズゴールドとステンレススティールのモデルにそれぞれ加わった。

長所ばかりではない

キャリバーRD680に果たして弱点はあるのだろうか? 答えはイエスである。まずは、ストップセコンド機能が搭載されておらず、スモールセコンドの針がリュウズを引き出しても動き続けているため、時刻を正確に合わせることができない点である。時計メゾンの長い歴史の中から生まれ、伝統を現代に受け継ぐべき運命を背負ったメカニズムならともかく、21世紀になってから開発されたムーブメントにストップセコンド機能がないのは、基本的に不釣り合いである。
ふたつ目は、緩急調整機構が緩急針のみを使用した極めてシンプルな構造になっている点である。マニュファクチュールムーブメントを搭載し、高価格帯に属する時計なら、バランスウェイトを備えたフリースプラングテンプか、ロジェ・デュブイが通常採用しているスワンネック型の緩急調整装置は期待したいところだ。とは言え、このムーブメントの場合、脱進機の上をセンターローターが回転するロジェ・デュブイのほかの自動巻きムーブメントとは異なり、マイクロローターが脱進機と同一の構造面に配されているために、スワンネック型の緩急調整装置を搭載するスペースがないのも事実である。

ムーブメント自体は本当に素晴らしいのだが、テストウォッチの精度が理想的とは言い難かった点は、3つ目の短所として述べておかなければならない。ウィッチ製歩度測定機で観察された最大姿勢差は、平常時で5秒、クロノグラフ作動時は6秒と、安定していたものの、残念ながらこの時計の平均日差は実際の着用時にもマイナス2・7秒/日で、この数値は平常時もクロノグラフ作動時も変わらなかった。
一方、ほとんどの姿勢において、平常時とクロノグラフ作動時で歩度と振り角に変化が観察されなかったのは、注目に値する喜ばしい結果である。これは、このクロノグラフ機構が省エネ設計であることを意味するとともに、ジュネーブ・シールの刻印が示す最高の品質、つまり、機能を司るすべての構成部品が摩擦をなるべく発生させずに連係プレーできるように、完璧に精密加工されていることの裏付けでもあるのだ。

ラグジュアリーウォッチはいずれにしても、時には数日間、腕から外し、再度、時刻を合わせ直すものなので、精度については実際、それほど差し障りがないにしても、視認性にやや難のある点が、着用テストでは日中に何度も気になった。文字盤と針はコントラストに乏しく、サブダイアルに配されたダークカラーの数字もほとんど認識することができなかった。その代わり、すべての針が適切な長さに設計されているのは好感が持てた。これは、ラグジュアリーウォッチといえども決して当たり前のことではない。有名な時計メゾンや、機能的なタイムピースで名高いブランドでさえ、すべての針をスケールにぴったり届くように設計するというディテールを徹底できていないことも多いのだ。

適切な長さの針のほか、モネガスク クロノグラフでは、センターのクロノグラフ秒針の白い先端部が文字盤のグレートーンから唯一、引き立つ要素として、安堵感を与えている。
視認性においてはやや欠如していた快適性だが、装着感は非常に心地よい。ストラップとバックルも、ケースバックと同様に手首へのなじみが良好だ。その上、ストラップとバックルは作りが極めて美麗である。手縫いのアリゲーターストラップはへり返し仕立てで、無垢材から削り出し加工されたセーフティーフォールディングバックルには入念にポリッシュ仕上げが施されている。テストウォッチとして編集部に送られてきた個体で唯一、気になったのは、アリゲーターストラップの表革に艶がなく、斑の入り方が美しくなかった点である。その他の要素があまりにも美麗なだけに、審美眼のある愛好家からは注意を怠ったと評されてしまうかもしれない。

こうした点を除けば、この時計は不注意とは無縁の仕上がりを見せている。すべての構成部品は品質が高く、部品同士は熟考を尽くした上で調整されている。モネガスク クロノグラフは、秀逸な機能、素晴らしい風貌、高い加工品質を備えたモデルなのだ。それでもやはり、224万7000円という価格はかなり高額な設定である。だが、新コレクションが控えめな造形美を特色としてはいても、この強気とも言える価格設定にこそ、奇抜なラグジュアリーブランド、ロジェ・デュブイの自信が表れているのである。ブランドの知名度や投資対象としての確かな価値を重視するよりも、新たな道を開拓したいと考えるのが、ロジェ・デュブイの時計を求める愛好家なのだ。そして、新たな道を歩むのにモネガスク クロノグラフほど気持ちよく、ふさわしい相棒はないのである。

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