【78点】ポルシェデザイン/ 1919 デイトタイマー 70Y スポーツカー リミテッド・エディション

スペックテスト

 きらめく暑い日差しの中、V型8気筒エンジンがうなりを上げ、コースガードとして置かれたストローバリアー(わらの塊)にハイオクガソリンの排気ガスが吹き付けられる。今回のスペックテストは、英国はチチェスター郊外のグッドウッドで開催される、かの有名なヒルクライムレースの観客でびっしり埋め尽くされた現場からレポートをお届けしよう。
「スロットル、ア ビット モア スロットル!」

 ポルシェ918スパイダーの助手席で、筆者に加速するよう指示しているのはインストラクターのゴードン・ロバートソンだ。目下のところスピードメーターの表示は120㎞/h。だが、まだゴール間近というわけではない。ここでフロアマットに付きそうなくらいにスロットルペダルをぐっと踏み込む。するとそれまで608馬力で走っていたこのV型8気筒のスーパースポーツカーは、いきなりフロントとリアに積んだ計286馬力の電気モーターを作動させ、獲物に飛びかかる肉食獣のごとく急進する。

 このような急加速は、内燃機関エンジンのみで走るクルマでは体感できるものではない。そういったクルマは、性能を発揮するのにわずかな時間がかかる。スロットルペダルを底まで踏みこんでから、実際に最大出力が伝達されるまでにひと呼吸の間を必要とするのだ。それに対し、ハイブリッドカーはフロントとリアに積んだ電気モーターが、車軸へ中継なしでワープするかのように直に動力を伝達する。それ故、クルマの停止状態からエンジンをかけ、スタートしてからわずか2.6秒で100㎞/hに到達し、その4.6秒後には時速200㎞/hを記録することが可能なのだ。
「ジェントリー、ジェントリー!」

 ゴードンはスピードを出し過ぎないように警告する。しかし次のカーブの手前でセラミックス製のブレーキをかけると、急進した時と同じような荒い勢いでタイミングよく速度は落ちた。この時、車体が路面に押し付けられるような感覚があり、ポルシェがこのクルマに取り入れている開閉式エアロダイナミクスの作用を感じさせられる。これは走行モードと速度に応じてフロントディフューザーとリアスポイラーの展開・格納が制御されるシステムだ。これによって空気の流れが自動的に調整される。

時計もクルマも通気性が大事。どちらも涼しい風を取り込める。

通気性を考えたケースデザイン

 吸気口といえば、筆者が腕に巻いているポルシェデザインの1919デイトタイマー70Y スポーツカー リミテッド・エディションはラグが長めで、ケースとバネ棒の間を広く取ってあるため、肌に空気が触れる。つまり、運転している918スパイダーのボディ同様に通気性があるデザインなのだ。ケース素材はチタンで、ブラックチタンカーバイドコーティングで硬化処理されている。腕時計の総重量は87gと非常に軽い。クルマのほうも、チタン製のビスとマグネシウムホイールを使用したヴァイザッハ パッケージと呼ばれるオプションを追加した仕様になっているので、同じ車種の通常モデルより約41㎏軽く仕立てられている。このオプションだけでも価格は7万1400ユーロと非常に高額だ。しかし918スパイダーを新車で買うとなると76万8000ユーロするので、オプションの金額などはもはや大したことではないように感じてしまう。


 ところで918スパイダーはとうに完売で、中古車の価格はかなり高騰している。その金額は120万ユーロを下らない。同じように限定品でも、今回のテストウォッチは1948本のみの販売だが、55万円とフェアプライスなのがうれしい。ちなみに初めて〝ポルシェのオーナー〟になるならば、限定品ではないエントリーモデルの腕時計として1919デイトタイマーもある。こちらも51万円と肩肘を張らずにすむ価格だ。

心地よいフィット感

 コースのゴールまで来ると、我々は危険と隣り合わせでありながらも爽快なクルマから這い出し、緊張感から解放された。そして名ドライバーのヴァルター・レアルが汗をかきながら熱々になった1956年製のポルシェ356A1500GSカレラクーペから降りるのを見送った。同様に917や他の伝説的なレーシングカーを操縦したドライバーもいたが、それらのクルマではエアコンが装備されていないのを耐えねばならない。我々が乗った918スパイダーのバケットシートはソフトタッチ合成素材のアルカンターラが一部に使用されており、張り具合も程よく、座り心地はまずまず快適だ。そのフィット感の良さは、テストウォッチにも共通している。膨らみを持たせたフォルムのケースは腕上で座りがよく、バタフライバックル付きのレザーストラップも相まって、着用感はかなり優れる。

 グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードは、音楽ジャンルで言えばウッドストック・フェスティバルのように、クルマやオールドタイマーの愛好者を沸かせる催しだ。規模が大きいので、さまざまなスター的存在のクルマが会場を華やかにしている。ことに注目すべきはこの100年に製造されたあらゆるメーカーのレーシングカーたちで、それらが間近で鑑賞できるのだ。見るだけではなく、音を聴き、匂いを嗅ぐこともできる。伝説的な名ドライバーが、これまた名車をドライビングし、後続車を振り切ってコースを猛然と駆け抜ける姿を目撃することも、珍しくない。ポルシェがスポーツカーを作り出してから70周年を祝するにはうってつけの機会だと言えよう。グッドウッドには、ポルシェがスポーツカーを作り出した最初の年である48年製の356第1号車をはじめ、F1用の62年製804から、WEC(FIA世界耐久選手権)参戦車両をベースにし、2018年6月にニュルブルクリンクの北コース・ノルトシュライフェでラップタイム新記録を出したポルシェ 919ハイブリッド Evoまで、意義深い21台もの歴代モデルが持ち込まれた。記録というと、918スパイダーもニュルブルクリンクで当時の市販車最速タイムを更新している。この時、918スパイダーは市販車として、初めてノルトシュライフェで7分を切ったのだ。

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